第8話 衝撃の再開

麗子は雄介が失踪してから、香港中を駆け巡って、雄介を探した。3日間、ずっと探して、香港の警察に捜索願を出した。一旦、麗子は帰国することにした。荷物には雄介の持ち物も含まれていた。

麗子は雄介と過ごす予定だった新築の家に帰ってきた。雄介とはまだここで一晩も過ごしていない。新婚生活が始まる前に、雄介はいなくなってしまったのだ。

麗子は日本の警察にも捜索願を出した。香港の警察からもらった書類を見せ、香港の警察も探している旨を伝えた。

雄介は銀行マンでもあり、新婚の妻を残していなくなってしまったのだ。自らいなくなってしまう理由がない。警察は失踪の可能性を否定し、事件として扱うことにした。人一人がいなくなってしまったのだ。香港の警察と連携を取り、日本の警察は捜索を開始した。1ヶ月、2ヶ月と捜索は続けられたが、全くなにも手がかりが得られなかった。その頃、雄介は、雪子として美樹と部屋に監禁されていたのだ。

捜索に割く人員は次第に減らされていった。

麗子はひとりぼっちの新しい家で、寂しく過ごすことが多くなった。あらゆる手は打った。それでも雄介は戻ってこない。

雄介が着るはずだったスーツを雄介の部屋のクローゼットにかけた。雄介がいつ戻ってきてもいいように部屋を整えて待った。

事件性が極めて高い失踪ということで保険会社からもお金が降りた。会社からも退職金が支払われた。失踪後7年待てば、死亡扱いになり、死亡保険金が降りる。それでこの新築の家のローンも返せる。それも、麗子のこころの慰めにはならなかった。

4年が過ぎた、ある6月の雨がしとしとと降っている日に、家のインターフォンがなった。麗子がインターフォン越しに覗くと、門の前に知らない女がオレンジの雨傘をさして立っている。オレンジのレインコートに、白いブラウス、紺のスカート、綺麗な黄色のレインシューズが少し泥に汚れている。

麗子には見たこともない女だった。誰だろうと思った。麗子は玄関のドアを開け、門のドアを開けた。つんと、甘いブランド物の香水の香りがする。なんか変な感じがした。

「どちらさまですか?間違いではないですか?」

女は麗子にぴたりと寄り添った。強い牝の香りがする。香水とフェロモンの入り混じった匂い。女は麗子の耳元で小声で囁いた。

「私よ、私。雄介よ」