その週末に祐奈は祐奈の母に会いに行くことになった。全く面識のない女だ。娘の容姿をしているからといってもすぐに見破られてしまうだろう。祐奈は化けの皮が剥がれることを恐れていた。
「大丈夫よ。祐奈はどこからみても祐奈よ。心配はいらないわ。祐奈のお母さんは古いアパートに住んでいるの。女手一つで祐奈を育てたのよ。祐奈はお母さんを楽させてあげるんだって言っていたわ。ちゃんとした会社にも勤めて。それが突然のあの事故。それでも祐奈は元気で戻ってきたのよ。お母さんは絶対に大喜びよ。東原さんと結婚したら、もっといいところに住ませてあげて楽をさせてあげなさい」
彩音は祐奈の母についていろいろ教えてくれた。祐奈は電車とバスを乗り継いで行くことにした。当然、彩音はついてこない。7月に入り、外は焼けるように暑い。祐奈は地味な、それでいて女らしい、いかにもOLという格好に日傘をさした。暑さに焼かれないよう、サンカットのSPF50の日焼け止めを塗っている。日よけに薄いサングラスをかけている。
祐奈の母という女にどんな言葉をかけて会えばいいのかわからなかった。会ったら、お母さん、ただいま、といえばいいのだろうか。不安で手指が汗でぐっしょりとなる。祐奈は慣れないヒールでよちよちとバス停に向かった。日傘をさしてしばらく待つとバスがやってくる。バスの中はがらんとしている。あまり客は乗っていない。冷房が効いてひんやりしている。湿っていた祐奈の手も乾いてくる。祐奈はバスに揺られながら、心を決めた。祐奈として演じ切るのだ。バレそうになったら、香港での事故の話を持ち出せばいい。祐奈はこれ以上、不安になるようなことを考えることをやめた。
バスと電車を乗り継ぎ、目的の街についた。猛暑の中を、日傘をさし、ヒールをよろよろさせ、地図を頼りに母のアパートを探した。アパートは古い建物だった。この2階、202号室に祐奈の母はいる。鉄錆で赤くなった階段をヒールをかんかんさせながら登る。この音でもうわかってしまうだろう。だぶん、ドアの向こうでチャイムが鳴るのを息を潜めて待っているはずだ。祐奈は階段を登り切ると、202号室へむかった。チャイムを押した。ちょっとしてドアが開いた。
出てきた祐奈の母は思ったよりも若くて美しかった。
「祐奈、待っていたのよ。おかえり。元気になるまで待って欲しいって彩音さんがいうから、ずっと待っていたのよ。元気そうね」
「ただいま、お母さん、戻るのが遅くなってごめんなさい」
そう言って、祐奈は祐奈の母に抱きついた。これはシナリオ通りだ。
「今日は泊まっていって。仕事は月曜からでしょう?」
「う、うん。泊まっていく」
「祐奈の部屋はそのままにしてあるのよ。いつ戻ってきてもいいように」
「少し記憶が戻らないところがあるの。部屋を見てきてもいい?」
「ええ、あなたの部屋だもの。部屋でゆっくりして。お茶の準備をしておくわ。祐奈の好きな山崎屋のチーズケーキを買ってあるのよ」
「うれしい。私の大好物」
口角をあげて、嬉しそうな表情をつくった。祐奈は、祐奈の部屋に入った。アニメとかでみる、女の子の部屋そのものだった。学習机に高校時代のものと思われるカバン。クローゼットを開けると、セーラー服が出てきた。これを着て祐奈は高校に通っていたのだ。クローゼットの下の引き出しを開けると、ショーツやブラがぎっしりつまっている。今の祐奈のものとは全然違い、どれも子供っぽい可愛らしいものばかりだ。パンダ柄のショーツや象の絵の入ったもの。ブラはは白が多い。化粧品はない。大きな姿見がある。この姿見に、高校生の祐奈はできる限りのオシャレをして、自分の姿を映したのだろう。
壁には男性アイドルのポスターが何枚か貼ってある。今の祐奈にはわからないアイドルだ。ここで祐奈は中学・高校時代を過ごしていたのだ。
祐奈は、セーラー服をきた祐奈はどんな感じだったのだろうと思った。今の祐奈は、高校時代は男物のブレザーにズボンの制服を着て学校に通っていた。セーラー服は女子のものだった。セーラー服を着た女子を、高校生男子らしい、いやらしい目で眺めていた。着たことのないセーラー服を着てみたくなった。それにブラもショーツも当時の祐奈を再現してみたかった。今の祐奈には似合わないかもしれない。それでも、いくらかは当時の祐奈を再現できるだろう。
祐奈はカーテンを閉めると、クローゼットから、当時着ていたブラとショーツ、キャミを取り出した。着てきた紺のワンピースをするりと脱ぐと、テカテカ光るストッキングを脱ぎ、ピンクのブラのブラホックを後ろ手に外し、ショーツを脱いだ。当時、祐奈が着ていた白のブラをつける。今の祐奈には少し小さい。なんとか後ろ手にホックを留める。犬の模様のついたショーツを履く。小さなショーツは遮るもののない股間にいっぱいいっぱいに広がり張り付く。大きな姿見に映してみる。今の祐奈には子供っぽいが、それでも当時はこんな感じだったのだろうということはわかる。白のキャミをつけてみる。
クローゼットからセーラー服を取り出し、襞スカートを履く。セーラー服の脇のホックを外し、着てみる。真っ赤なリボンを結ぶ。ブラとショーツだけならお腹が見えてしまうところをキャミが隠している。大きな姿見に映してみる。今はすっかり女らしくなってしまった祐奈だが、セーラー服を着てみると、当時はこんな感じだったのかというのがわかる。可愛らしい女子高生だったのだろう。襞スカートを持ち上げ、くるりと回ってみる。可愛らしい。姿見の前でいろいろとポーズを取ってみる。こんな感じで高校生の祐奈は学校に通っていたのだ。
しばらく、当時の祐奈が持っていたカバンを持ってみたり、シュシュをつけてみたりして、姿見の前で楽しんだ。高校生の女子がどういうものであるか、少しわかった気がした。
セーラー服を脱ぎ、ワンピースに着替えると、祐奈の学習机の中を覗いてみた。当時使っていた可愛らしい文具などがでてくる。
祐奈は彩音から聞いた祐奈と、この部屋の記憶を照合してみた。彩音から聞いた高校、高校時代の親友、好きだったぬいぐるみ。祐奈は、少しずつ、昔の祐奈と融合していくみたいだった。やがてはただの祐奈になるのだ。
茶の間に行くと、母がチーズケーキと紅茶を用意していた。
「長かったわね」
「懐かしかったの。いくらか思い出せた気がする」
「それはよかったわね」
そう言って、母が微笑んだ。母と一緒にチーズケーキを食べた。祐奈が好きだったチーズケーキは、とてもおいしかった。今の祐奈も好きになった。
夕方は、一緒にお買い物に行き、お揃いのエプロンをつけて、一緒に台所に立って、当時の祐奈が好きだったというカレーライスを作った。母はとても楽しそうだ。
一緒に夕食を食べた。これが祐奈の母の味なのだ。これが今の祐奈の母の味になっていくのだ。
食べ終わると一緒に台所に立ち、洗い物をする。すっかり女同士、母娘という感じだ。この母が、今の祐奈の母なのだ。
夜、祐奈がお風呂に入っていると、母が入ってきた。
「祐奈、女同士一緒に入ろう。お風呂は小さいけれど、久しぶりに一緒に入ろう、昔みたいに」
母は年齢にも関わらず、美しい。乳房はこぶりで垂れていない。ぷっくらした乳首がツンと上を向いている。お尻は大きく、ぷりぷりと張りがある。今の祐奈が男だったら、ちんぽを固く勃起させていただろう。今の祐奈のクリトリスはもう色っぽい女の裸を見ても勃起しない。女同士なのだ。母の体は甘いミルクの匂いがする。
なんかすごい😆⤴️
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From 美由紀