第7話 婚約者

茜は姉、恵子とちょっとした喧嘩をした。茜は女になって4年目を迎えようとしていた。高校2年生。姉の恵子は高校を卒業すると大学進学を勝手に決めてしまった、高校は御園学園高等部。女子校だ。ここを卒業した女子は、たいてい大学へは進学せず、お嫁に行くか、婿を迎える。大学進学者はごく少数だ。姉の恵子はいつの間にか大学進学を決めてしまった。茜がこの話を知ったのは、母、瞳とお風呂に入っている時だった。

「恵子は大学に進学するんだって。普通は、長女が婿取り、次女がお嫁に行くので、恵子が婿をとると思っていたの。そしたら、大学に行きたいって、パパも許しちゃったの。パパ、甘いからね。私は大学に行って欲しくなかった。他の子みたいに就職したいなんていいはじめるに決まっているわ。だから、茜は大学にはいかせない。高校を卒業したら、お婿さんを迎えてもらうわ」

湯船で瞳が抱きついてきた。茜は突然のことで驚いた。

「わ、私はお姉ちゃんみたいに大学にいけないってこと?」

「ええ、茜は大学にはいかせないわ」

「こんなによくしてもらっているけれど、お姉ちゃんみたいに大学に行ってみたかった」

茜の目から涙がこぼれ落ちた。瞳がやさしく涙を拭った。

「茜は、高校を卒業したら結婚。お婿さんを迎えるのよ。お相手も決まっているわ」

「私の結婚相手はもう決まっているってこと?」

「ええ、じきにお見合いの場を設けるわ。お見合いじゃなくて、結婚の話は決まっているんだけれど」

茜はすごく悲しくなった。もう、自分には自由はないのだ。この家に女の子、茜としてもらわれてきたということは、家の存続の道具としてもらわれてきたということなのだ。この家のために後継を産むために。

茜は瞳の腕の中で、しばらくしくしくと泣いていた。

「ママもそうやって、この家にお嫁に来たのよ。茜はまだ自分の家じゃない。ママも18でお嫁にきたけれど、毎日が楽しいわよ。そんなに悲しいことじゃないわ。赤ちゃんを産めば、大きな顔ができるわ」

「ママは、大学に行かなかったことを後悔している?」

「いいえ、全然。結婚して楽しい生活が送れているもの。それに恵子と茜が養女にきてくれたし、本当に幸せ。次は孫の顔が見てみたいわ」

恵子とちょっとした言い争いになったのはその夜だ。

「なんで、勝手に大学進学を決めちゃったの?私に相談してくれても良かったじゃない」

「卒業後、どうするかは私の自由。茜に相談する必要はないわ」

「そんなことないわ。どちらかが婿取りで、どちらかがお嫁に行くの。それを話し合わないで、勝手に大学進学なんて困るわ」

「お父さんが許してくれたんだ。お嫁に行くなら、結婚は大学が終わってからでいいって」

「私はそのせいで、高校を卒業したら婿取りで結婚するのよ。決める前に相談してほしかった」

「相手を決める自由はないんだ。私も大学を卒業したら、お嫁に行く。茜は大学に行きたかったかい?」

「まわりに大学に行くって子はほとんどいなかったから、行きたいってほどじゃないけれど」

「私も大学を終えたら、お見合い結婚。2人とも相手を選ぶ権利なんてないんだから同じだろう」

「ママが、お姉ちゃんは就職したいなんていいだすかもって心配していたわ」

「その心配はないよ。この高島家にはすごくお世話になっているんだから」

「これからは大事な決断をするときは相談してよね」

「ごめんね。茜」

そう言って、ベッドの上で恵子は茜を抱きしめた。

茜は高校2年生、女になって4年目の春を迎えようとしていた。すっかり女の生活に慣れていた。親友の美樹や華、結衣、桃香と一緒に高校に進学した。セーラー服にも慣れていった。髪も腰まで伸びた。通学の時はポニーテールに結っている。学校の休み時間に、美樹や華にその話をしてみた。

「ここの女の子は卒業したら結婚する子がほとんど。私も華や結衣も一緒よ。茜も心配することはないわ。結婚してもお友達でいられるわ」

美樹が言った。女としての恋愛を経験していない茜には男と結婚するということがぴんときていなかった。

お見合いの日取りが決まった。お見合いといっても、実際には婚約者との顔合わせだ。

当日、茜は振袖を着せられて、きれいにお化粧させられた。茜は女として十分に美しかった。お相手は荒井手幸雄。父の腹心の部下で名門の家の御坊ちゃまだ。将来の社長候補と言われている。年齢は27。年の差は11歳違う。すらっとしたハンサムな男だ。こんな男と結婚したいと願う女は山ほどいるだろう。

大広間で、両家での顔合わせが済むと、幸雄と二人きりにさせられた。

「これからよろしくね。茜ちゃんは、何か部活やっているの?」

「バレー部やっています。中学から。あまり上手くないけれど」

「スポーツは好きなんだね」

「はい、体を動かすのは好き」

「結婚したら、一緒にいろいろできるね。お見合い前に写真を見せてもらっていたけれど、こんなに可愛い子と結婚できるなんてすごく嬉しいよ」

「お屋敷を案内してあげますね。5月で天気がいいから、新緑が美しいわ」

茜は幸雄の手を引いた。幸雄の手はごつごつしていて大きい。男の人の手だ。幸雄の手を引くとなぜか胸がどきどきした。茜は幸雄を異性として意識し始めていた。もうすっかり心は女なのだ。男のことは話したこともない、うぶな女性なのだ。幸雄からは男の体臭がする。もう茜の体にはない匂い。幸雄は茜に優しかった。手を繋いでお屋敷を散歩した。

「学園祭はあるのかい?」

「ええ、あるわ」

「今度、行くから。招待してくれ」

「わかったわ。その時には一緒に回りましょう」

学園祭。お友達も婚約者が決まっていれば連れてくる。婚約者の幸雄が来てくれるのはうれしかった。お互いに婚約者の話ができるのだ。聞いているだけの寂しい立場から抜け出せるのだ。

その夜は、瞳にも恵子にもその話をした。結婚させられるのは嫌じゃなかった、というより嬉しかった。初めての男性のお友達ができるような感覚だった。高校までずっと友達は男だったのだ。女になって、男とは友達になれなくなった。それが結婚を気に、男の友達ができる、そんな気分だった。

「茜はうれしそうね。お相手がいい男で。女にさせられて、結婚させられるなんて、茜はもっと嫌がるかと思っていたわ」

と同じベッドの上で恵子が言った。

「昔みたいに男の友達ができたみたい」

「男の友達じゃないわよ。異性である夫よ。毎晩、茜の体を求めてくるわ」

「大丈夫。男の気持ちはわかっているわ。男だったんだもの。女とセックスしたくてたまらないって感じかしら。女とセックスしたいっていう男だった私が望んだ女の子が今の私。私が受け止めてあげる」

「茜が素直にうけいれてくれて嬉しいわ。茜は本当に可愛い女の子」

その晩、茜は幸雄のことを思い出しながらオナニーをした。今、指を入れている女性器に本物の男性器が入ってくるのだ。いままで、茜にもついていた男性器が。どんな感じなのだろうか?膣奥をバックで腰を振りながら突くのだろうか?そういうことを想像すると、茜の女性器はさらに熱くなった。クリトリスをいじり、膣の浅瀬をかき回した。この中に男性器が入ってくるのだ。奥の奥まで。茜の膣からはとろりとした蜜が大量に流れていた。

突然、視界に恵子が入ってきた。

「おちんちんを入れられる想像をしていたでしょう?これを使って。通販で内緒で買ったの」

恵子はディルドを取り出した。初めて見る茜には随分大きく見えた。恵子がコンドームをかぶせて、ローションを塗って、茜に手渡してきた。

「あ、ありがとう」

「こういうのが入ってくるのよ。練習しておいた方がいいわ」

茜は蜜でびしょびしょの膣穴にゆっくりとディルドを押し込んだ。押し込むと膣穴がぎゅっと締まる。幾千、幾万の膣襞で締め上げている感じだ。そこを奥までずんずんとピストンをすると、その肉襞一枚一枚が擦れて快楽の波を発生する。その波が干渉しあって、巨大な津波になり、茜の意識を飲み込んだ。膣穴からはダムが決壊し、蜜が溢れている。茜は快楽の波に飲まれて、頭がまっしろになり、あまりの快感に体をガクガクと震わせて行ってしまった。

「高校生じゃ、ディルドは買えないから、私からプレゼントするわね」

恵子が言った。

学校生活では学園祭が近づいてきた。茜は荒井手幸雄に招待状をだした。自分の宝物をお友達に見せびらかすのに近い感情を覚えていた。