経血おりものバー ーブラッディメアリーー

そのバーはある雑居ビルの5階で営業している。名前はブラッディメアリー。看板はなくいつもひっそりとしている。ここがバーだと気づく人はいないだろう。なにせドアも普通の部屋のドアと同じ鉄製で、中を覗きみることはできない。それでも営業している。カラオケも騒ぐ人もいない。東京都の営業許可もちゃんととってある。

ここは経血おりものバーブラッディメアリー。経血とおりものをこよなく愛する変態紳士淑女が集うバーなのだ。メニューには、由香のおりものとウォッカのカクテルや、優子の2日目の経血のラムのカクテルなどのメニューがある。一目見ただけでは、本当に経血が入っているのか、ただのそういった名前のカクテルにすぎないかはわからない。だが、常連になり太い客になると、女体のボトルキープができ、直に女体からおりものや経血を採取し、カクテルをつくってもらえるようになる。経血の採取は、経血カップから行われる。生理期間中の女体の膣から客が経血カップを取り出すのだ。生理中の女性は、ナプキンやタンポンを使うことが多いが、ここでは女性は経血カップの使用が義務付けられている。客も慣れないうちは経血カップの経血をこぼして大惨事を招きかねないが、ベテランにもなると新米の客に経血カップの取り出し方を教えたりする。常連の太客は、自分がボトルキープした女体の基礎体温のデータがプレゼントされる。それによって、女体の排卵日や生理日が予想できるのだ。

 このバーには女性客もいる。他の女のおりものや経血を味わってみたいという変態だ。常連の女客で、ボトルキープした女体の経血カップを取り出したり、おりものシートからおりものをすくってカクテルにしてもらったりという変態だ。

 美智子はこのバーで女体ボトルとして働いている。給料はすごくいい。美智子は以前は普通の会社で働いていた。生理が重く、生理休暇で休むことが多かった。生理の軽い女の同僚からは、生理ぐらいで休んでと陰口を叩かれていた。生理ぐらいでといわれても、美智子はお腹が痛くて体を動かすことができないのだ。仕事は休まざるを得ない。忙しい時には、生理ぐらいで休まれちゃ仕事がすすまないのよ、と女子トイレで面と向かっていわれることもあった。なんの取り柄もない美智子には何をいわれてもこの仕事にしがみつくしかなかった。ここをやめてしまえば、仕事が見つかる当てなどない。

 女体ボトルの仕事を見つけたのはそんな時だった。ネットかなにかだった。自分の生理の経血がお金になるとは思ってもみなかった。それにお給料も今の会社の2倍以上だ。美智子は試しに面接にいった。条件は、他の仕事をしないこと、定期的に生理がくること。女体ボトルのしごとは接客ではなかった。ボトルとして経血やおりものを供給するのだ。バーテンダーにおりものを採取され、経血を提供する、馴染みの客になると直接に股を開いておりものを採らせたり、経血カップの取り出しをされたりする。勤務時間は8時から12時まで。控えの部屋にいて、バーテンダーや客が来ない間はゲームをして過ごしたり、読書をして過ごしたりと仕事としてはすごく楽だ。ただし、毎朝基礎体温を測り、マスターにメールで報告しなければならない。これは馴染みの客にデータとして提供されるという話だった。

 美智子は、不快な仕事だったが、仕事内容はよかったので、今まで勤めていた会社を辞めて女体ボトルとなった。女体ボトルはお客に犯されたりする心配はない。同伴のノルマもない。バーテンダーやお客に自分の女性器の小陰唇やクリトリスや膣穴をのぞかれたり膣穴に指を入れられたりするのを我慢すればいいだけなのだ。

 控えの部屋には常時、4、5人の女性が控えている。みんな大人しそうな女性だ。時々バーテンダーや客が入ってくると、指名された女性はスカートをたくし上げる。バーテンダーがショーツを下ろしておりものシートからおりものを回収したり、下にビニールを敷いて経血カップを回収していく。経血カップから経血が溢れることはない。ただの用心だ。ほとんどの女性はデルタゾーンの毛を処理していてパイパンになっている。美智子は女体ボトルの仕事を始めて、自分の隠毛を剃り始めた。おりものを回収される時、隠毛にからまってしまい採集量が減ってしまうと、収入に影響するかもしれないと考えたのだ。

控えの部屋にいる女性は、いつも同じとは限らない。いつの間にかいなくなってしまう女性もいる。自ら辞めたのか、首になったのかはわからない。ただし、評判の良くない女性はいるみたいだった。控えの部屋にいるのに注文がこないのだ。そういう女性はいつのまにかいなくなっている。美智子のおりものや経血は評判がいいみたいだった。よくバーテンダーや客がきて、おりものや経血を回収していく。美智子はこの仕事を始めて、生理用ナプキンを経血カップにかえた。ナプキンほど交換しなくてもいいし、ムレもにおいもない。重い生理もそれほど気にならなくなった。

 美智子は最初、50過ぎと思われるおじさんに経血カップを回収されるのは本当に不快だった。顔はぎとぎとしていて頭は禿げ上がっている。そのおじさんが股を開いた美智子の膣穴にビニールの手袋をした手を入れて、そっと上手に持ち手をつかんでカップを引き出すのだ。そのカップには経血が満ち満ちている。おじさんはうれしそうににこにこしている。美智子を女体ボトルキープしている常連客だ。美智子も目を合わせてほほえんだ。収入源、収入源と思いながらも、不快感は拭えなかった。それでも慣れると、馴染みのおじさんとは言葉を交わすようになる。来てくれてありがとう、と言ってみた。美智子の経血やおりものは最高だよ、他の子も飲んでみるが、やっぱり味が違う、美智子のがいちばんおいしいよ、と褒めてくれる。そういわれると美智子は嬉しい気分になってしまう。おりものや経血がほめられるなんて今までになかった経験だ。でも、その会話はおじさんが美智子の女性器、クリトリスや尿道口、膣穴を目にしながら交わされているのだ。美智子はそういう異常な環境にも慣れていった。

 このバーに通ってくる女性客に玲子がいる。玲子はメニューの中からよく美智子のおりものや経血のカクテルを頼んでいる。玲子のかつての高校時代の同級生に美智子という女子がいた。その女を思い出しながら飲んでいる。それに美智子のおりものや経血は味が安定しておりおいしいということもある。おりものや経血の味はなかなか安定しないのだ。いろいろな女の経血やおりものを試してみたが、最近は美智子に落ち着いている。それで高校時代の美智子を思い出したのだ。

 玲子の知っている美智子はグズでのろまな女の子だった。美智子に会ったのは高校1年のときだ。ともだちがいなくて、教室でいつもぽつんとひとりでいる。勉強もできないし、運動もできない。なにかあるとあわてふためいている。体育できがえるのも、授業の用意をするのも人一倍おそい。まわりの席の女子になにか指摘されるとすぐにあわてふためく。

 玲子は美智子をみているといらいらした。友達と、美智子をいじめてやろうと思った。ある日、美智子がカバンからなにかをとりだして教室をでていこうとする。玲子とその仲間2人は美智子の後をつけた。美智子は女子トイレにはいっていく。個室に入ろうとした時、玲子が個室のドアを抑えた。

「な、なにするんですか」

びっくりして美智子があわてふためいている。手からポーチを落っことした。

「お前、生理なんだろう。みててやるよ」

玲子の仲間がドアを閉めた。狭い個室に4人がぎゅうぎゅうづめになる。

「俺はおまえみたいなとろい女がきらいなんだよ。さあ、ぱんつを下ろせよ」

美智子はぐずぐずと泣き始め、仕方なくスカートをたくし上げ、ショーツをおろした。玲子の仲間がポーチをひろう。玲子はポーチのなかからはねつきの生理用ナプキンをとりだした。美智子はぐずぐずなきながらショーツをおろし、真っ赤な経血に染まった生理用ナプキンをさらしている。目からは涙がぽろぽろおちている。

「さあ、このはねつきに取り変えろ」

美智子はぐずぐずなきながら、ショーツにはられた生理用ナプキンをぺりぺりと剥がし始めた。それを汚物入れにすてようとすると、玲子にとりあげられた。玲子が匂いをかぐ。

「くせえな。ぐずこの生理はくせえなあ」

 玲子は仲間と美智子の経血にそまったナプキンを回しながら笑った。美智子がぐずだからぐずこなのではない。ぐずぐず泣くからグズ子なのだ。グズ子はぐずぐずと泣き、涙がとまらなかった。玲子は経血でそまったナプキンを汚物入れに捨て、あたらしいナプキンを美智子に手渡した。

「授業がはじまっちまうぞ。さっさと貼り替えろ」

グズ子はぐずぐずなきながら、はねつきの生理用ナプキンをショーツのクロッチ部分にシートをはがしてはりつけた。ショーツをもちあげ、スカートをなおす。

「これからは一生おれのいうことをきけよ。きたないナプキンを見せたんだからな」

玲子はそういってグズ子を脅して、トイレからでた。次の授業にグズ子は出てこなかった。グズ子が教室に姿をあらわしたのは午後からだった。玲子の顔を伺い、泣きそうな顔をしている。玲子はグズ子がすこしかわいそうになった。グズ子を仲間にひきいれた。グズ子にぱしりをさせたり、かつあげしたりはしない。どこかに仲間と一緒にいくときはグズ子を無理やり参加させた。グズ子はいやそうでもなかった。玲子は町の不良たちと交流があるわけでもないし、深夜の街を徘徊するタイプでもない。カラオケにいったり、ファストフード店でだべったりするだけだ。そこにグズ子がおとなしく参加している。

 玲子はグズ子とプールや海にも行った。グズ子を水に沈めようとしたが、本気だったわけではない。ただのおふざけだ。それでもグズ子はぐずぐずと泣いてしまう。玲子はグズグズ泣いているグズ子を抱きしめた。グズ子の体は柔らかく、甘い匂いがした。

 玲子はバーで美智子のカクテルを飲みながら、楽しい高校時代を思い出していた。玲子は美智子のカクテルを気に入り女体ボトルをキープした。なんども店に通って常連になり、キープした女体ボトルから直接におりものや経血を採取する権利を手に入れた。女体ボトルの基礎体温をプレゼントされた。

 玲子はこの店に通うようになってから経血カップ(生理カップ)を使うようになった。いつか女体ボトルから直接経血を採取するための準備だ。経血カップは思った以上に便利だった。蒸れも匂いもない。長時間使っていられる。いままで生理用ナプキンに費やしていたお金が半減した。経血カップはきれいに熱湯消毒すれば何度でも使えるのだ。

  初めて自分のキープした女体の経血を採取する日がやってきた。二日目の経血だ。一番おいしいのは二日目だ。バーテンダーに控え室に案内された。そこにはあのグズ子がいた。美智子という名前はありふれた名前だ。まさかあのグズ子だとは思わなかった。そのグズ子が目の前に立っている。バーテンダーが下にビニールシートを敷いている。

「こんにちわ」

美智子がにっこりと微笑んだ。

「グズ子なのね。びっくりしたわ」

「玲子さんがくるなんて思わなかった。最初の出会いも生理だったわね」

「グズ子のおりものや経血はおいしいわ。グズ子にもこんな特技があったなんてびっくり。会えて嬉しいわ」

玲子はうれしそうに微笑んだ。美智子はスカートをたくし上げ、ショーツを下ろし、ガニ股になる。美智子の女性器は無毛だった。クリトリスや小陰唇が丸見えになっている。玲子はビニールの手袋をして膣内に手を入れると、ゆっくり経血カップの取っ手をひっぱった。経血カップは膣内に折りたたまれた格好で押し込まれている。取っ手を持ってゆっくりとりだすと、カップがきれいに開く。こぼれないように手元に引き寄せる。経血カップには真っ赤な経血が満ち満ちている。

「最高のカクテルができそうよ。ブラッディメアリーがよさそうね」

 玲子はうれしそうにほほえんで、経血カップをバーテンダーに手渡した。バーテンダーは店に戻ってしまう。

「バーテンダーが戻ってきたら、経血カップを入れてあげる。あの時みたいに。もう泣かないんでしょう?」

「ええ、これがお仕事ですもの。玲子さんに気に入ってもらえて嬉しい。高校時代にはちゃんと言えていなかった。私、玲子さんと一緒にすごせてとっても楽しかったの。玲子さんに会わなければずっと一人ぼっちだった」

「電話番号を教えて。それって禁止されているの?」

「そんなことはないわ。そんな人はいままでいなかったけど」

玲子と美智子の電話番号交換が終わった頃にバーテンダーが熱湯消毒をした経血カップをもってきた。玲子は自分でしているみたいに経血カップをきれいに折りたたむと、美智子の膣のなかに取っ手を下にしてゆっくりとおしこんだ。経血カップはなかで少し開き、道を塞いで経血を集め始める。美智子はショーツをはき、スカートをなおした。

「上手ね。玲子さん」

「私も使っているのよ。経血カップを。私はグズ子のカクテルを楽しんで帰るわ。近いうちに会いましょう」

 玲子は控え室を後にした。バーテンダーがブラッディメアリーを作り始める。玲子はできあがった美智子2日目のブラッディメアリーをちびちびと飲み始めた。安定の味でとってもおいしい。グズ子とはいつ会おうか考えはじめた。卵胞期の前の方。おりものが少なくて体調がいいとき。グズ子の生理周期を頭に思い浮かべる。そのときは玲子自身は、黄体期で生理前のPMSの時期だ。それでも元気なグズ子をみると気が晴れるだろう。グズ子が元気な時ならすこしぐらいからかってももうグズグズ泣かないだろう。

 玲子は美智子2日目のカクテルを3杯飲み干してから、楽しそうに店を後にした。

第2話 経血おりものバー 由紀子の場合