五十嵐太一は五十嵐正孝の長女である。太一というのは、彼女が日常生活を送る上での名前である。彼女は中学3年生。男として学校に通っているわけではない。生まれた時も今も男だ。ただし、戸籍上は、五十嵐結奈(ゆな)女性。五十嵐家の長女として生まれ、将来は女として生きていくことが定められている。許された期間を男として過ごしているにすぎない。睾丸は幼いうちに切除され、声変わりもおきない。声はソプラノのままだ。高校生になれば、女性の姿で過ごさねばならなくなる。女子高生になるのだ。当然に、ペニスも解体され、膣穴が穿たれ、子宮が埋め込まれることになる。
結奈が生まれた1年後に長男の琢磨が生まれ、その2年後に次女の春香が生まれた。結奈が生まれた時は、その後に女が生まれるとはわからなかった。だから結奈に、女として生きて、五十嵐の家の跡をとるという責務が課されたのだ。五十嵐の家は女が婿をとる女系の家系なのだ。
太一は中学1年から女性ホルモンの注射をうけている。3年生になり、体はますます女体化している。
「太一はますます女っぽくなってるな」
隣の席の幼馴染、正輝がからかった。
「やめてくれよ。女になんかなりたくない」
太一は不機嫌そうにソプラノの声で答えた。
「太一が女の子になったら女子のグループに入れてあげるから心配しないで」
知世がにこにこしてからかった。知世も幼馴染だ。
季節は7月、期末試験が終わり、季節は夏へ向かおうとしている。太一は男の姿で学校に通うのに限界を感じ始めていた。女のような声で、からだも女のようにふっくら丸みを帯び、ウエストがみごとにくびれている。6月から始まった水泳の授業は全て欠席した。胸がお椀のようにもりあがり、乳首も太くなってきている。お尻も大きくなってきている。こんな体で、男物の海パンをはいて人前にでることなどもうできない。
家では母の玲奈が、2学期からの太一のセーラー服を準備している。太一はセーラー服など着たくなかった。家では太一のセーター服をみた弟の琢磨が、
「兄貴は姉貴になるんだな。本当に女だな」
とにたにたしながらからかってくる。妹の春香は
「お兄ちゃん、やっとお姉ちゃんになるんだね。春香、ずっとお姉ちゃんが欲しかったんだ。これでお風呂も一緒にはいれるね」
といって、うれしそうだ。
太一はお風呂でオナニーをした。陰嚢のないペニスは透明な液体しか吹き出さない。オナニーを覚えたのは中学1年生のとき。もうあまり勃たなくなってきている。それでも、オナニーは男である証でもあった。太一の視界にはペニスの前に隆起した胸がいやでも目に入る。女の胸だ。自分の女の胸になど興奮できない。太一の普段のペニスはとてもちいさい。女物のショーツを履けば誰もそこにペニスがあるなどとは夢にも思わないだろう。太一はオナニーをするたびに泣きたくなるほど悲しくなる。それでもオナニーはやめられない。女になってもオナニーはできるのだろうか?そもそも女はオナニーをするのかわからなかった。知世もオナニーをするのだろうか?そのペニスはいずれ解体されてしまうのだ。そう思うと太一は無性に悲しくなった。
学校に行く時に姿見に映る自分の姿は、どうみても女の子が男物のシャツとズボンを履いているみたいだった。胸もふくらみ、乳首が下着にすれて痛い。2学期からは女の格好で登校しなければならない。クラスメートは、正輝はどう思うだろう。女子はどう思うだろう。もう2学期からは登校できないかもしれない。
「夏休みには一緒にプールでもいくか」
終業式の日に、にこにこしながら正輝がいった。男の格好でプールに行けないことぐらい知っているのに嫌味なやつだ。
「行けないってわかっているのに嫌味なやつだな」
「そんなこともないさ」
正輝がにやりとした。
「どういう意味?」
「まあね」
正輝はそれきりその話題に触れなかった。この終業式で学校生活も終わりかもしれない。2学期から女装で登校なんてありえない。
夏休みの8月頭、幼馴染の知世とクラスメートの美奈代、絵里、理子がそろって訪ねてきた。アブラゼミがうるさくないている。
「今日はプールのお誘い。太一君はもう女の子として生きていくのよね。今日はデビュー戦よ。女子としてのプールデビュー」
知世がにこにこしている。
「嫌じゃないのか。男の俺が女子としてプールなんて。」
「結奈の女子デビューよ。2学期からは女の子扱いなんだから、私たちも慣れないとね。女子の更衣室に入っても全然嫌じゃないわよ。もう男子更衣室には入れないでしょう。おちんちんはまだついているみたいだけど、うまく隠してあげるわ」
美奈代がにこにこしていう。
「結奈の女子デビューに私たちで水着を買ってきたのよ。アンダーショーツをはけば可愛いおちんちんも隠せるわよ」
理子が水着が入っているとおぼしきデパートの袋を太一の目の前にかかげた。太一が戸籍上は結奈という女なのだということはなぜかクラスメートには伝わっているみたいだ。担任が根回ししたのだろうか。
「お、俺はじょ、女子更衣室になんか入らないぞ。プールもいかない。お、俺だって勃起するんだからな」
それは嘘だった。手で握って強く刺激を与えないと勃起しないのだ。女の裸をみてもそれだけでは勃起しないのだ。・
「じゃあ、証拠をみせてよ。私たちの裸、見せてあげる」
絵里が意地悪そうな笑みを浮かべた。玄関先でそんな話をしていると母がやってきた。
「みんな来てくれたの?あがって。冷たい麦茶をだすわ。結奈は2学期から女の子だから女の子のお友達が必要。女の子は女の子のなかで女の子になるのよ。こんな可愛い女の子がお友達でよかったわね。女の子デビュー、うまくいきそうね」
母はそう言って、家に戻っていった。
「さあ、家にはいりましょう。結奈が男の子かどうか確認しないといけないわね」
知世がまるで自分の家みたいに太一の家にあがる。幼い頃からそうなのだ。
「おじゃまします」
といって、美奈代、絵里、理子が家にあがってくる。広い畳敷きの居間にはいると、母が全員分の麦茶をもってきた。
「これからプールにいくなら、女の子らしい服を用意しないとね。ワンピースがいいかな」
母はうれしそうだ。
「お、俺はいかない。絶対に行かないからな」
「俺系女子ね。自分のこと俺っていう女の子。それはそれで可愛いわね」
理子が太一と母のやりとりをおもしろそうに眺めている。
「結奈のために水着買ってきてあげたのよ。今更いかないなんて」
「水着買ってきてくれたの?それじゃあ、行かないとね」
母が麦茶を置きながら言った。全員が麦茶を一口飲むと太一を取り囲み、無理やり立たせて部屋へ連れて行った。
「お母さんもあとで行くわね。結奈の水着姿みたいから」
台所から母の声が聞こえる。
「さあ、行きましょう。これから女の子同士になるんだから恥ずかしがらないの!」
と知世。
部屋に入ると、知世、美奈代、絵里、理子に取り囲まれた。太一は半袖のシャツに、短パンというスタイルだ。半袖のしたにはなにも付けていないため、胸の隆起が、大きい乳首がはっきり透けて見える。ウエストはくびれていて、どうみても女の子が男物を着ているようにしかみえない。
「さあ、脱いで、恥ずかしがる必要はないわ。どうみても女の子にしか見えないもの。そんなシャツを着ていると、どこへも行けないわよ。胸の隆起がはっきりと見えるし、乳首も透けて見えてる。これからはブラもしないといけないわね。さあ、ちゃんと用意して一緒にプールに行きましょう。さあ、脱いで、恥ずかしがらないで、私たちも脱いでいせるから。いいわよね?」
知世が、美奈代、絵里、理子をみた。理子はさっそく、着てきたブラウスとスカートを脱いで、ブラに手をかけた。
「ちょ、ちょっとまってよ。僕は男子なんだよ」
女子!と理子がいう。太一は女4人の全裸を目にすることになった。太一のちんぽはぴくりとも反応しない。
「さあ、結奈のばん」
しかたなく、シャツと短パンをぬいだ。俺のちんぽをみて驚いたってもう知らないからな、と思った。太一は全裸になった。白い肌、ウエストのくびれ、胸の隆起、太い乳首、大きなお尻、どれをとっても女子だった。ちんぽもどうどうと見せた。みんな嫌がるにちがいない。なにせ俺はまだ、男なのだ。でも、知世も美奈代も絵里も理子嫌がる様子をみせない、逆に興味津々だ。美奈代が太一のちんぽを握ってしまった。
「こんなに小さいんだ。おっきくなるの?ならないわね。4人の裸の女を目にして全く大きくならないのね。男が私の裸をみてちっとも興奮しないとすごく落ち込むわ。でも、結奈は女の子なのね。やっぱり女の子、小さなおちんちんのかざりのついた女の子」
絵里が大きくならない太一のちんぽを突いた。
「やわらかい。親戚の3歳の男の子をお風呂に入れた時、その子のおちんちん、こんな感じだった。赤ちゃんのちんぽね。かわいいわ」
「女の子に可愛いおちんちんの飾りがついているだけ。おっきくならないもの。正輝のちんぽなんて見たくないし、見られたら絶対気絶するけど、結奈なら平気。もう女の子なんだものね」
知世はそういうと、袋からワンピースの水着と、アンダーショーツを取り出した。水着はオレンジ色の花柄のワンピースだ。4人の女に監視されて、仕方なく太一はアンダーショーツをはいた。アンダーショーツはぴたっと体にはりつき、小さなちんぽの存在は全く分からなくなった。太一は花柄の水着をきた。両足を通して、上にひっぱりあげると体にやけに密着する。体のラインにあわせてしわをとり、右肩のひもに右肩をとおす。次に左。これで完成だ。
「すごくにあってる。その水着で正解だわ」
知世がそういうと、隣で3人が太一をじっとみて、ウンウンと言っている。
「さあ、私たちもきてみましょう」
と美奈代がいった。4人の裸の女はそれぞれに持ってきた水着をきた。4人ともセパレートの水着だった。4人の女の着替えをみて、太一はすこし興奮した。それに少しは恥ずかしい気持ちも当然だかあった。それでもアンダーショーツのなかのちんぽは全く反応しなかった。5人で部屋にあった姿見に全身を映してみた。太一はショートヘアの可愛らしい女の子にしか見えなかった。
「さあ、着替えてプールにいくわよ。結奈のお母さんに支度をしてもらわないとね。シャツと短パンじゃいけないしね」
太一はワンピースタイプの水着を脱ぐと、アンダーショーツを脱ごうとした。
「アンダーショーツはそのまま。その方が着替えが楽でしょう」
理子が笑顔でそういった。太一はシャツをきて、アンダーショーツの上から短パンをはいた。知世はきがえると、急いで部屋から出ていった。母を連れてもどってきた。
「結奈が女の格好をするのを楽しみにしていたの。ブラも女物の洋服も全部揃えてあるわ。2学期から女の子だものね。今日は、女の子のデビュー戦ね。女の子デビューの日にこんなに女の子のお友達が見守ってくれて、結奈は幸せね。女の子デビュー、絶対うまくいくわ」
そういうと部屋のクローゼットの一番下の引き出しをあけた。太一はそんなところは開けたことがなかった。シャツやズボン、下着のシャツやトランクスは上の棚にはいっている。下の棚など気にしたことがなかった。母はそこから女物の下着や、洋服を取り出した。
「本当はハンガーにかけておかないといけないんだけれど、目の前に女物があると結奈はいやがるでしょう。だから仕方なく隠しておいたの。さあ、着て」
母だけなら、逃げ切れるかもしれなかった。でも4人の女が見つめている。仕方なく太一はシャツと短パンをぬいだ。ブラに両手を通すと、母が後ろでホックをとめる。ブラはしろい、なんのかざりもないものだ。白いブラウスを着せ、赤いスカートをはかせた。
「ショーツはもっていってね。アンダーショーツ、ぬれちゃうでしょう」
着替えが終わると、姿見の前に立った。ショートヘアのかわいい女の子が映っている。母は部屋をでると、またすぐにもどってきた。バッグやなにかを両手いっぱいにかかえている。
「バッグはこれをつかってね。女の子小物も用意したわ。知世ちゃん、でかける支度をしてあげてね」
そういうと母は部屋を出て行った。
「任されたわよ。支度をしてあげるからね」
知世がそういうと美奈代、絵里、理子と一緒にバッグの小物を整理した。SPF50+の日焼け止めがでてきたので、理子が太一の両腕、両足、首元に塗った。知世は麦わら帽子をかぶり、白のブラウスに赤のスカート、肩にバッグをかけ、出かける支度がととのった。玄関にでると、見知らぬ可愛い、赤のエナメルの靴があった。
「誰かきているの?」
見送りに来た母にきいた。
「ああ、その靴ね。結奈がはいていくのよ。スニーカーじゃその格好に似合わないでしょう」
太一は深くため息をついた。もう諦めるしかない。プールにいくのにはバスにのる必要がある。女装がばれないかとあたりをきょろきょろした。だれも太一が男の子だと気がついている様子はなかった。太一はそれでも不安だった。知世、美奈代、絵里、理子が太一を見ながらにこにこしている。
市民プールにいくと、そこには正輝と浩司が立っていた。半袖のシャツに短パン、海パンとかタオルがはいったビニールの水着入れを持っている。
「太一、だいぶ可愛くなったな。これからは結奈と呼ばないといけないな。どこから見ても女の子にしか見えないぞ」
こんな話はきいていない。この場から全速力でにげだしたかった。クラスの友達に女装を見られてしまったのだ。顔から火が出そうだった。
「太一は結奈になってすごく可愛らしくなったぞ。2学期からがすごく楽しみだな。こんな可愛い女の子と一緒にすごせるんだから」
浩司がいった。からかってばかにしているのか、本心なのかよくわからない。
「結奈は女子更衣室にはいるんだろう。結奈の水着姿みてみたいな」
正輝が太一を舐め回すようにみている。どうしてみんな、この状況を普通にうけいれているんだろう。おかしいだろう。友達が女装しているんだぞ、
「お、俺が女装しているのに、変だとは思わないのか、なんですんなり受け入れているんだ」
「結奈は3年の時から女の子扱いだからな。女の子として意識していたんだからな。女の子が男子の服をきて学校に来ている感じ。そっちの方がずっと変だったぞ。おっぱいが透けて見えそうでひやひやしたぞ。肩をたたくのも妙に緊張したんだから。お前がまともな女の子らしい服をきてくれて、これからは安心できる」
正輝がそういうと、浩司が、
「まったくだ。男子の服のお前は、目のやり場に困ったぞ。妙に意識してしまうからな」
といった。
切符売り場で入場券をかうと、
「さあ、行きましょう。プールで遊びましょう」
と行って、知世が太一を女子更衣室に引っ張って行った。太一にはもちろん初めての女子更衣室だった。女の人が、乳房丸出しで着替えている。若い女の人もけっこういる。でも女の裸を見てもアンダーショーツのなかのちんぽは大きくならなかった。4人の女たちにつれられて、太一はオレンジの水着にきがえた。初めてのブラジャーは知世が後ろのホックを外してくれた。用意ができた太一は自分の姿を鏡に映してみた。どこからどうみても女の子にしかみえなかった。女装した男子などには絶対にみえない。女の子そのものだ。着替えている女性で太一のことを不審に思うものなど一人もいない。すんなりうけいれている。髪の短い太一は髪をまとめる必要がなかったが、理子は長い髪を束ねってキャップの中に押し込んでいる。
用意が整うと、太一たちは外にでた。太陽の光が眩しい。正輝と浩司が待っていた。
「結奈はかわいいな。オレンジの水着がよく似合っている。結奈はこうじゃないとな。これで妙な気を使わないで済む」
正輝がうれしそうに言った。
こうして太一の女としての生活がはじまった。もう引き返すことはできないのだ。