五十嵐結奈 ー女の子の世界ー

結奈はオレンジのワンピース水着を身につけて陽の光の下にでた。正輝と浩司が結奈をみて微笑んでいる。もう、すっかり女の子をみる男の子の目だ。

「かわいいぞ。よく似合っている。結奈」

正輝が声をかけてくれる。でも、太一とはよばない。もうこれからは呼ばないだろう。

「さあ、遊びにいこう」

正輝が結奈の手を引いた。

「すっかり女の子してるじゃん」

知世が微笑んでいる。結奈たちはプールに向かった。プールは25mの長方形のプールだ。全員でプールサイドで準備運動をする。初めて着る女のもののワンピース水着が変な感じだ。周りをみると、若いワンピース水着の女の子のグループがいる。女子高生のグループだろうか?結奈は準備運動を終えると知世たちに連れられて、プールの中に入った。プールの水は冷たくて気持ちがいい。美奈代が水をかけてきたので、結奈は水をかけ返した。絵里、理子が加わった。はじける冷たい水は気持ちいい。正輝と浩司は向こうのほうで勝手に泳いでいる。

「結奈、結奈はこれからは女の子なんだから私たちと遊ぶの」

知世が結奈に抱きついてきた。ワンピース水着をきた彼女の体は、ひんやりして、ずっしりして柔らかく気持ちがいい。

「これからはいくら抱きついても当たり前のこと。女の子同士だもの」

知世は結奈にだきついて、微笑みながらそういった。結奈はもう、正輝や浩司とは遊ばない。一緒に遊ぶのは、同性の知世たちなのだ。

 結奈は知世たちと、太陽に焼かれて、思いっきり遊んだ。自分が女の子として生きていかなければならないことなど忘れたかのように。

帰り際に正輝がそばに来た。

「楽しかったか?結奈はすっかり女の子だな。すっかり馴染んでいたぞ」

そういって白い歯を見せて微笑んだ。そばで浩司も楽しそうな顔をしている。結奈を見る目はもう女の子を見る目だ。

「とっても楽しかった。プールに来られてよかった」

「これから結奈は幼馴染の女の子扱いでいいな。そのほうが安心だ」

「結奈、これから着替えて帰りましょう」

知世が後ろから結奈に抱きついてきた。結奈は不安になった。きた時はアンダーショーツをはいてきたので、スカートを脱いでも見られる心配はなかった。でも、きた時にはいてきたアンダーショーツは水でびしゃびしゃになってしまった。そのうえにスカートをはいてかえるわけにはいかない。女子更衣室でアンダーショーツを脱がなければならない。おちんちんをみられたらどうしようと思った。そばに絵里がやってきた。

「大丈夫。心配しないで。みんなで隠してあげるから」

そう結奈の耳元でささやくと、結奈の右手をとった。反対の左腕を知世が握った。左右の腕を絵里と知世に握られて結奈は逃げられない状態で女子更衣室へ向かうことになった。女子更衣室では、大部分の女子が水着を脱いで帰り支度をしている。女の匂いがする。おっぱいを普通にさらして着替えをしている。それでも結奈の陰嚢のないおちんちんは、水でひえて冷たくなって、さらに小さくしなしなになっている。亀頭の部分は皮をかぶったままだ。

「上半身を脱いだら、バスタオルを巻きつけるのよ」

美奈代が教えてくれた。結奈はワンピース水着の肩の部分を左からはずしていく。左右の肩の部分が外れても、水着は体にぴったり張り付いている。理子がそれを胸の下まで押し下げる。お椀型の小さい、白くて美しい乳房が露わになる。

「すごくきれいなおっぱい」

そういって、理子が右手の人差し指で突っついた。だめっつ、と結奈は声をあげた。

「次はバスタオルを巻くのよ」

知世が、脇の下からうまくバスタオルをまわしてくれる。バスタオルを落ちないように後ろで挟み込んでとめる。結奈はかがみこんで、水着とアンダーショーツを脱ぎとった。バスタオルの上からぽんぽんと叩き、水をとる。バスタオルを巻いていても小さいままのおちんちんは全く目立たない。

「ほら、ショーツをはきなさい」

知世が薄いブルーのショーツを手渡してきたので、結奈はそれをうけとってはいた。その上からスカートをはくと、バスタオルを外した。

「次はブラジャーね」

 知世が勝手に結奈のバッグからショーツと同じ薄いブルーのブラジャーを取り出した。前にならえの結奈の両腕にブラの肩ひもを通し、乳房をきれいにカップに入れると、後ろでホックをとめた。女子におっぱいを触られるのは変な感じだ。これが正輝ならどうだろう。

「すっかり女の子ね」

理子が楽しそうに微笑んでいる。周りは女の子だけ。それぞれが乳房をあらわにして着替えをしている。結奈はすごく恥ずかしかったが、おちんちんはぴくりとも動かなかった。知世、絵里、理子、美奈代は慣れた手つきで水着をぬぎ、美しい乙女の女体をさらすと、バスタオルで水をよくふきとって、ショーツをはき、ブラジャーをまとっていく。結奈はブラウスをきた。これでもう男だとバレる心配はない。短い髪をタオルで丁寧に拭いた。知世たちは長いきれいな黒髪を丁寧にバスタオルで拭いている。結奈も髪を伸ばし、彼女たちのようにバスタオルで丁寧に髪を乾かさなければならなくなるのだ。

 外にでると、正輝と浩司が待っていた。結奈の立ち位置はもう、正輝の側ではない。もう知世たち女の子側の一員なのだ。

「今日は楽しかったよ。俺たちはここで帰るから」

 正輝はそういって、浩司と帰っていった。

「一緒に帰ろう」

知世が言った。帰りに女子全員で結奈の家に寄った。母の玲奈が出迎えた。

「楽しんできたようね。上がっていって。ケーキを買ってきたの。それに手伝って欲しいことがあるの」

 女子全員が家に上がり込んだ。居間の大きな机の周りに結奈、知世、絵里、美奈代、理子がすわると、母の玲奈が全員に用意していたチーズケーキを配った。チーズケーキを食べながら母の玲奈がいった。

「お願いっていうのはね。結奈の部屋を片付けて欲しいの。もう、女の子でしょう。男の子みたいなものはいらないの。お洋服や下着も変えないといけないし。自分ではやらないからみんなに手伝って欲しいの。新しいお洋服や下着は2学期に備えて準備してあるわ」

 チーズケーキをおいしそうに頬張っていた知世が、

「それなら任せて」

とうれしそうに返事した。結奈は急にすごく悲しくなった。思わず涙がこぼれた。悲しくなるの涙がでてしまうのか女性ホルモンの影響なのだろうかと思った。

「なにないているの?一緒にやるわよ。みんな一緒だし。これから女の子になるんだからお部屋も女の子らしくしなくちゃね。女の子らしい部屋になったらお泊まり会をしましょう」

 知世がそういうと、女子はみんな嬉しそうに賛成した。全員がチーズケーキを平らげて母の出してくれた紅茶を飲み終わると、結奈の部屋へ向かって、片付けを始めた。男物の服やトランクスなどの下着は全部、ゴミ用のビニール袋に放り込まれた。弟の琢磨が顔を見せて、もらえるものはもらっていくよ、と少年漫画のマンガ本やアニメのフィギア、サッカーボールなどを奪っていった。母が顔をみせて、知世たちを運び込む洋服や下着がある部屋へ案内した。

「これを持っていってハンガーへかけてね。下着はこっち。クローゼットにいれて。お願い」

 わかりました、そう返事をして、知世たちは女物の洋服や下着を結奈の部屋に運び込んでいく。クローゼットのハンガーはたちまち女物の服で埋め尽くされた。クローゼットの下の引き出しは、色鮮やかなブラジャーやショーツで満杯になった。ベッドには可愛い、大きな熊のぬいぐるみが運び込まれた。部屋はみるみる、女の子の部屋になっていく。2学期から女の子の格好で登校することになることは覚悟していたが、夏休みの間に部屋が女の子仕様に変更されてしまうなんて想像もしていなかった。

 絵里がベッドに寝転がった。

「結奈、夏休みの間にお泊まり会を開こうね。一緒に寝てあげる。結奈はもう女の子のお友達だから」

 知世たちは、お泊まり会でくるからね、といってハグをして帰っていった。太一だった頃に知世とハグなどしたことはなかった。ハグをした知世の体は柔らかく、いい匂いがする。それは結奈も同じだった。きっと、体からは女の子の匂いがするのだろう。ブラウスとスカートという格好のまま、ベッドにごろんと横になると、かすかに絵里の甘い女の子の匂いがする。ここで自分が眠る。そしてベッドは次第に女くさくなっていくのだ。

 その夜、結奈はお風呂でオナニーをした。女子更衣室でみた知世や絵里の白い女体を想像しただけではしぼんだペニスは大きくなることはない。女子並みかそれ以下の握力になってしまった結奈は、今日見た女たちの裸体を思い浮かべて小さなペニスを力いっぱいしごいた。そして、やっと少し勃起してきた。皮に覆われたピンクの亀頭が少しばかり顔をだす。オナニーができることが男の証だった。今握っているペニスはいずれ解体され、なくなってしまうのだ。ピンクの亀頭は女のクリトリスへとつくりかえられてしまうのだ。その前にすこしでも男でいたかった。さらに強くこすると、結奈は絶頂を迎え、ペニスはお湯の中にやっと透明な液体を吐き出した。目の前にみえる小さなお椀のような乳房の乳首をこりこりと押しつぶしてみた。ぴりぴりとした電流が体を走った。乳首で絶頂を迎えられるなどとは考えたくなかった。それでも女性ホルモンに侵食された結奈の体は確実に女に近づきつつあった。

 結奈はあの日から女として暮らし始めた。もう女装ではない。女を装っているのではなく、女として暮らし始めたのだ。ブラをつけ、ショーツをはく。女の格好の結奈を不審に思うものはいない。どこからみても女の子なのだ。

夏休みが終わりに近づいて、知世と絵里が泊まりにきた。結奈をみた知世は開口一番にいった。

「もう、結奈はどこからみても女の子ね。でも、まだ見た目だけ。女の子は女の子の中で女の子になるのよ。女の子のお友達は女の子だけ。私たちが女の子の世界へ案内してあげるわね」

 結奈は複雑な気持ちだった。これからは女の子として生活するのだ。でも、自分は男だという気持ちが残っている。

 結奈は知世と絵里と一緒に、母の玲奈とキッチンに立った。知世たちとプールに行った日以来、女の格好で過ごし、母のお料理を手伝っている。その日は、母を手伝ってハンバーグをつくった。結奈は知世たちと一緒にエプロンをつけてハンバーグの肉団子をつくる。

「結奈は最近お料理を勉強し始めたのよ。少しずつ上手くなってるわ」

母が嬉しそうにいう。

「結奈は本当に女の子になりつつあるわね。もう正輝や浩司とつるんじゃだめよ。あいつらは男。もう結奈とは違うのよ。これからは私や絵里がお友達よ」

知世が結奈に微笑んだ。正輝や浩司と距離ができてしまうのは寂しかった。夕食は母、玲奈と弟の琢磨、妹の春香、知世と絵里と一緒にテーブルを囲み、手作りのハンバーグを食べた。

「お姉ちゃん、ハンバーグおいしいよ」

 妹の春香がいう。琢磨は姉に変わってしまった兄をにたにた見ている。結奈は知世や絵里、母とおしゃべりしながら夕食を終えた。夕食を終えると、母や知世、絵里と一緒に食器洗いをした。

「お風呂を沸かしてくるわ。誰でもいいから順番にはいってね。結奈はお友達とお泊まり会なんて、本当に女の子になったわね」

 母はうれしそうにそういうと、お風呂場へ行ってしまう。

「結奈と絵里とお泊まりできてうれしいな。結奈は幼馴染だけど女の子じゃなかった。中学生になってなんか距離ができちゃった気がしたの。でも、もう女の子同士。これからますます結奈は女の子になっていくわ。すごく仲のいい幼馴染同士になれると思うの」

 知世は嬉しそうだ。

「中学3年に入ってからますます女の子になってきたわね。心配していたのよ。男の子の世界からも女の子の世界からも浮いちゃうんじゃないかと思って。でも女の子の世界に入ってきてくれて安心だわ」

 絵里もにこにこしている。食器の片付けが終わると、結奈の部屋へ戻った。部屋に残されたわずかなロールプレイングのテレビゲームで遊んだ。お風呂のわく音が聞こえた。母が呼びにきた。

「結奈、お風呂に入りなさい」

「結奈、お風呂に入ってきて。出たら、私たちが入るから」

 知世がテレビゲームのコントローラーを握りながら言った。

「わかった。先にはいってくるね」

 知世と絵里がクローゼットの引き出しを開けている。何かを見つけ出したようだ。

「なにしているの?」

「結奈のパジャマを探していたのよ。かえのブラとショーツももっていきなさい」

 結奈は薄い水色の可愛らしいフリルのついたパジャマとかえのブラとショーツを持たされた。知世も絵里もこの前、クローゼットの入れ替えを手伝ったので、何がどこにあるか知っているのだ。結奈はパジャマとブラとショーツをもって、お風呂場に向かい、脱衣所で裸になると、お風呂場に入った。白い肌はきめ細かく、胸は蕾のようにお椀型に盛り上がっている。ウエストはぎゅっとくびれている。おちんちんがついていることを除けば、どこからみても女の体だった。カランの前に座って、ボディーソープで体を洗い、母と妹の春香の使っているシャンプーで髪を洗った。弟の琢磨と父が使っているシャンプーはもう使わないように言われたのだ。髪をすすぎ終わって、湯船に体を沈めた。そのとき、外で音が聞こえた。誰か入ってくるみたいだ。声が聞こえる。知世と絵里だ。お風呂場と脱衣場をしきっているドアがあいて、裸の知世と絵里が入ってきた。

 実際の女の子の裸をまじまじと見るのは初めてだった。プールの女子更衣室では自分の着替えに夢中で二人の裸をあまり意識しなかった。でも、今は別だ。手ぬぐいをもって、胸も女性器も隠さずに堂々と入ってくる。思わず、結奈は目を閉じた。見てはいけないものをみてしまったと思った。

「何目を閉じているのよ。女の子同士でしょ。何も恥ずかしがることないじゃない」

絵里はそういうと、知世と並んで、カランの前で体を洗い始めた。こっそり目をあけて二人をみた。女の子らしいきれいな美しい体をしている。二人が長い髪を洗い終えると、狭い湯船に入ってきた。

「こんなに狭いのに。別々に入ればいいのに」

 結奈が文句を言った。

「女の子の結奈と一緒に入りたいの。そのためにきたんだから」

知世はそういうと狭い湯船で結奈の小さなおちんちんに触った。おちんちんはしぼんだままで大きくなることはない。赤ちゃんのおちんちんみたいだった。

「かわいらしいわね。高校生になったら、これはなくなっちゃうのね。だから触ってみたかったの。結奈が男だった証を」

 絵里が結奈の左手をとった。そして、うすい隠毛の生えた女性器にもっていった。

「結奈もこうなるのよ。触っていいわ。なんにもないでしょう」

絵里のそこにはなにもなかった。おちんちんもきんたまもない。すべすべで、一列の谷間が走っているのがわかる。結奈もやがて知世や絵里と同じ体になるのだ。男だった体とお別れするのは悲しいが、知世や絵里が女の子として受け入れてくれるのはすごく安心できた。狭い湯船に3人でくっついてお互いの体温や匂いを感じあった。

 その夜、結奈は女の子らしい水色のパジャマを着て、一人用の狭いベットに3人で眠った。結奈はお風呂上がりの女の子のいい匂いを胸いっぱいにかいだ。でも、いい匂いがするのは結奈も同じだった。結奈は女の子なのだ。

 そろそろ8月が終わり、2学期が近づいてくる。結奈はセーラー服と襞スカートをはいて学校に通わなければならない。男子だった頃の制服は処分されてしまったのだ。周りが女の子の格好をする結奈をどう思うか不安だった。2学期からはもう学校には行きたくなたった。正輝も浩司も結奈の女装を知っている。知世も絵里も美奈代も理子も。女の格好をしているのをみられるのはすごく恥ずかしく、すごく嫌だった。

 8月の終わり頃、結奈がお風呂に入っていると、外で音がした。誰かと思うと、母の玲奈が全裸で入ってきた。

「結奈が子供の頃以来ね。一緒にお風呂はいるの。でも、これからは平気ね。女同士だもの」

 そういうと母の玲奈は、カランの前で体を洗い始めた。結奈は母の美しく白い女体をみるのは初めてだった。知世や絵里とはちがう大人の女の体だった。体を洗い終わると、湯船に入って結奈の隣に座った。結奈を見ると抱きしめた。大人の女のいい匂いがする。

「結奈、ごめんなさいね。最初に生まれた子だから女になってもらうしかなかったの。2人目に女の子が生まれるかわからなかったし。男の子だったらできたかもしれないことを諦めてもらうことになってごめんなさい。女の子になったからには絶対に幸せにしてあげるわね。女になってよかったって思えるぐらい。これからは女同士、一緒にいろいろなところにいけるわね。ママは、結奈と女同士、結奈が男の子だったらできなかったことをいっぱいいっぱいしたいわ」

 母は泣いているみたいだった。結奈は母を抱きしめた。

第3話