第2話 誘拐された雄介

コンビニはホテルから2、3分歩いたところにあった。人通りの多い道路に面していた。雄介は、コンビニでサンミゲルのビール4本と適当なおつまみを買って、レジで清算した。ホテルに帰ろうとした時、体に電撃のようなものが走り、意識が遠ざかっていった。雄介は前のめりに地面に倒れた。

「おい、だいじょうぶか?」

という声がはるか遠くの方から聞こえる。次第にその声は遠ざかっていく。雄介の視界は暗闇に閉ざされていった。

雄介が道路で倒れた時、3人の男たちが走り寄ってきた。

「おい、だいじょうぶか?」

男の一人が声をかける。

「俺の車で病院に運ぶから手を貸せ」

もう一人の男が雄介を抱き起こすと、もう一人が脇の下に肩を入れた。二人に抱きかかえられて、細い脇道に連れ込まれ、止まっている黒いワゴンに乗せられた。

周りで見ていた人たちは、具合が悪くて倒れた人が、親切な人たちに助けられたとしたとしか思っていなかった。事態はあっという間だったので、まさかこれが誘拐だなどと思う人はいなかった。目撃していた人たちもそんなことがあったなど、すぐに忘れてしまっていた。

雄介が気が付いた時には、どこかのベッドの上にいた。窓はなかっが部屋は明るい。入り口のドアが一つ。天井にひとつ灯っている照明が部屋を照らしている。手足を動かそうとしたが、手足には枷が付けられ、そこから何処かへ鎖が伸びている。部屋には鏡も何もない。

しばらくして、ドアが開いて大男と細身の女が入ってきた。

「あなたはいい顔をしているわね。素敵な女顔。これから私たちの組織でニューハーフとして働いてもらうわ。手術、3ヶ月くらいの訓練。それからお仕事よ。お迎えが来るまでここから出ることはできないわ」

細身の女はにっこり微笑んで、流暢な日本語で言った。

「ここから出せ」

雄介は鎖をじゃらじゃら鳴らして大声で喚いたが、女は無視して部屋を出て行った。ドアがカチリと閉まった。

その女は食事を持って大男と一緒に入ってきた。雄介は頑として食事を拒否したが、3日目には空腹に勝てなかった。手足の枷を外して食事をしている間は、大男が見張っている。逃げ出す隙はなかった。食事の後は女に元通りベッドに鎖で縛り付けられた。夕食と思われる食事の後に、部屋の唯一の天井の照明が自動的に消え、雄介は眠りにつく。雄介が目が醒めると付いているので、これが1日の目安らしかった。

手足の枷は特殊な素材で作られているらしく、1周半して小さな南京錠で3箇所留められている。その反対側に鎖が繋がれている。鎖は食事の時には外してもらえるが、枷は絶対に外してもらえなかった。枷は少しだけ上下に動かせる。ずっとしていると、赤く痒くなるので、少しだけ動かして軟膏を塗ってもらう。

小便はオムツをされて、食事の時、女と大男に見張られて取り替える。大の方は大男の見張りの元、室内でおまるで女に見られてすることになった。体は風呂に入れないので、食事の時に、大男の見張られて、女に拭いてもらう。

食事には女性ホルモンが入っているみたいだ。その影響で、時々ひどい頭痛や吐き気に襲われる。次第に脂肪が薄く雪のように降り積もり始める。ペニスは小さくなり、朝立ちの頻度が減っている。どうやら体は次第に女性化しているようだ。少しずつ、胸が隆起し、お尻が大きくなってきている。乳首もぷっくらしている。

ある日気がつくと、眩しいライトに照らされて、台の上に寝かされていた。白衣を着た医者たちが見える。何をされるのだろうか。しかし、体は麻酔をされているのか全く動かせない。食事に睡眠薬が混ぜられていたのだろう。下半身のところに仕切りがある。その向こうで医者たちが作業をしている。もしかして、という不安が雄介の頭をよぎった。ニューハーフにするために玉をとっている?もう男には戻れない。雄介はなんの抵抗もできない自分に腹立たしかった。そして、ニューハーフにされてしまうという悲しみに包まれた。その作業はあっという間に終わった。雄介の顔に麻酔のマスクが被され、再び雄介は意識を失った。

部屋に戻された雄介は、ジャージの下を下ろして、自分の股間を確認した。竿だけで玉はもうなかった。竿も女性ホルモンのせいで、しなしなと小さくなっている。雄介の目から涙があふれた。胸も豊胸手術でCカップのぷっくらした乳首がつんと上を向いたお椀型の乳房になっている。顔を触ってみると、以前と全く違う気がする。顔も女顔に整形されたみたいだ。

それからもホルモン注射は続き、雄介は女と見まごうほどの容姿になっていった。

ある時、大男と女が入ってきた。

「さあ、これから働いてもらうわよ」

女がにっこりして言った。

大男が雄介に目隠しをすると、鎖を外し、高々と肩に担ぎ上げた。雄介はなすすべなく、されるがままになっていた。