第1話 人魚誕生

地下の巨大な水槽を1匹の人魚が悠々と泳いでいる。水槽には珊瑚らしきものが植えられている。アクリルの水槽はアクリルの板で封がされ、その何箇所かに穴が空いている。

地下室は明るい光で煌々と照らされている。

一人の60ぐらいの男性がポロシャツにズボンという出で立ちで肘掛け椅子に深々と腰掛けて、にやにやしながら人魚を眺めている。

地下室に置いてある唯一の掛け時計が12時を示す。

地下室に男がやってきて、水槽に梯子を掛け、アクリルの空いている穴から、おにぎりみたいなペレットを何個か落とす。餌の時間だ。人魚は餌を、水かきのついた両手でつかむと、口に持って行って、かぶりついた。

肘掛け椅子に座っている男は満足げに笑うと、立ち上がって部屋から出て行った。

人魚は、人間だった頃は、秋元律子と呼ばれていた。会社の20代のきれいなOLだった。その会社は、その男が所有する会社だった。律子は車でドライブするのが好きだった。運転は得意だった。ある日、紅葉を見ようと、一人で山道をドライブに出かけた。くねくねする山道を運転していると、反対車線から大型のトラックが突っ込んできて、律子の車に衝突した。律子は気を失った。気がつくと、ある病院の手術室に寝かされていた。

男は、山上祐太郎と言った。祐太郎はいつか、人魚を飼ってみたいという夢を抱いていた。ある日、祐太郎に吉報がもたらされた。水棲人間の研究をしていた平田幸治郎という老人の遺品や家屋敷が子の平田英吾によって売り出されたというのだ。

平田幸治郎は孤高の学者だった。地上はいつか人類で満杯になり、いつか人は海に住むようになるだろうと、水棲人間をつくる研究をしていたのだ。そんな研究は学会から当然に認められなかった。一人でも、お金をつぎ込んで、幸治郎は研究を重ねたが、幸治郎の夢は叶うことなく生涯を閉じた。幸治郎が研究のためにつぎ込んだお金の借金は、子供達に重くのしかかってきた。英吾は父の全てを売り払って、借金を返そうとした。

これは、祐太郎にとっては好都合だった。祐太郎は闇医師たちに水棲人間、つまり人魚の研究をさせていた。そこへ、さらに平田幸次郎が研究していた水棲人間をつくる研究のデータが手にはいるのだ。祐太郎は幸治郎の名前を知っていた。いつか、そのデータが欲しいと考えていた。それが息子の英吾によって売り出されたのだ。お金のある祐太郎は、英吾の言い値よりもさらに高い値段で幸治郎の遺品をすべて買い取った。

祐太郎は、闇医師たちに人魚をつくる研究を急がせた。その実験第一号が秋元律子だった。律子がドライブにいくという情報を知っていた祐太郎は、わざとトラックを突っ込ませたのだ。警察には裏から手を回して、律子は事故死で死亡という扱いになった。また、トラックが突っ込んできたのではなく。律子がハンドルを切り損なって、崖下へ転落したことになった。

律子は目がさめると手術台の上だったが、麻酔をされているせいか体が動かせなかった。何度か麻酔を嗅がされて、眠らされた。気がつくと、律子は水槽の中にいた。きっちり、律子が入る大きさの水槽だ。頭よりも高い水槽の上にはアクリル板が取り付けられ、水槽は水で満たされていた。律子は丸裸だった。顔やからだは完全に水の中にあった。それでも不思議と呼吸は苦しくなかった。両手は水槽の底に、枷で縛り付けられていた。天井には煌々と照明が灯っていた。

白衣を着た男がやってくると、天井のアクリル板を外した。もう一人のガタイのいい男が枷を外して律子を持ち上げた。

「はじめての人魚だ。お前はこれから人魚としてここの水槽で暮らすのだ。ご主人様がお前に名前をくれた。マリアだ、これからは人魚、マリアとして暮らすのだ」

嫌っ、と叫んで男の手から逃れようとした。

「お前は、地上では生きられない。それにもう一人で歩くこともできないんだよ」

白衣の男がにやっと笑って言った。律子を抱えていた男が律子を床に立たせた。律子は歩こうとしたが、両足はぴったりくっつき、足ひれのようなものができていて、歩こうにも歩けなかった。両足は透明な膜みたいなものでぴったり合わさっていた。両手をみると指と指の間に水かきができている。

「そろそろ、体が乾いてくる、呼吸ができなくなる。巨大水槽へ移動の時間だ」

ガタイのいい男は再び律子を抱えると、部屋を出て、長い廊下を歩き、別の部屋へ入っていった。そこには巨大水槽があった。部屋には肘掛け椅子にすわった男がいた。男は律子を見ると、椅子から立ち上がって近づいてくる。

「やあ、目が覚めたかね。マリア。お前はこれからここで暮らすんだ。もう、地上では生きられない。餌はペレットを用意する。ディルドのサンゴ礁も用意している。小便も大便も経血も垂れ流しでOKだ。水は循環しているから。水は常時25度に保たれているから快適なはずだ。それから、夜の相手も頼むからな」

「私に何をしたの?何が起こっているの?」

「お前を水棲人間に改造したのだ。いわば、人魚だ。うつくしい人魚の泳ぎを見せてくれ」

律子を抱えている男は、水槽に梯子を掛けて登り、水槽に律子をそっと入れた。律子は全裸だった。確かに、水の中でもなぜか呼吸ができた。律子は水泳は普通にできたので、水槽の中を泳いだ。白いサンゴらしきものが見える。それはよく見るとディルドでできている。水槽のアクリルに男が近づいてきた。ディルドを指差した。律子はいやいやをした。ディルドでオナニーをしろということなのだろう。

男はなにかスイッチのようなものを取り出して、ボタンを押した。全身に激しい電流が走る。仕方なく、律子はディルドのサンゴ礁の方へ泳いでいった。乳首をこりこりといじり、クリトリスをつまんでいじくると、上を向いて突き出しているディルドに腰を下ろした。律子の女性器は完全に脱毛されていた。クリトリスを激しくいじり、ディルドで膣内を激しくかきまぜた。ふかぶかと膣内にディルドを押し込み、激しく出し入れすると、あっという間に行ってしまった。

男は満足げだった。男はさっき律子を抱えてきた男に何かを指示した。男が何かを持って、梯子を登ってくる。律子は水面に顔をだした。

「これからはこれがお前の食事だ」

そう言って、おにぎりのようなペレットを水中に放った。

「もう、普通の食事は食べられないの?ご飯やパンやお寿司なんかは食べられないの?」

「ああ、もうこれからはこれだけだ。他のものはたべられない。安心しろ。健康に生きられるようにきちんと栄養を配合して作っている、人魚用の餌だ。鯉の餌みたいなものだ」

そう言われると、律子は涙が急にこみ上げてきた。

「もう、人間の生活には戻れないの?」

「もう無理だ。これからは人魚としていきるんだ」

律子は涙が止まらなかった。悲しみが溢れてきた。

「餌は下に転がっている。拾って食べろ。眠るときはあそこにベルトがあるから体を固定して寝ろ」

そういうと男は梯子を降りていった。律子は水面に顔を出したまましばらく泣いていた。それでも律子はお腹が空いていた。水中にもどって、転がっている餌を拾って、口に運んだ。味はしなかった。水でふやけて、ぐにゃぐちゃした。なんとか、律子は餌を食べ終わった。顔は涙でぐちゃぐちゃだが、周りは水が循環している。さっき、律子に電流を流した男が満足そうに眺めている。

マリアの人魚としての生活が始まった。部屋にはマリアからも見えるところに壁時計が一つ掛けてある。

夕方には餌が差し入れらる。

8時ごろに、さっきのガタイのいい男と電流を流した男がやってきた。ガタイのいい男がマリアを水槽から抱え上げた。そして、部屋にあるベッドに寝かせた。

電流をながした男が近づいてくる。

「私は山上祐太郎。人魚を抱いてみたいと思っていたんだ」

そういうと、着ていた服を全部脱いで裸になった。

「マリア、お前の卵巣はすでにとりだしてある。中出ししても、子供ができることはない」

そういうと、マリアの乳首をいじり始めた。

いや、こういうのはいや、とマリアはわめいたが、祐太郎の力には敵わなかった。祐太郎にさんざん犯されたあと、マリアは水槽に戻された。

マリアは、水槽の中で眠れるだろうか、と不安になった。今までは柔らかいベッドの中で眠っていたのだ。水槽に用意されていたベルトを細い腰に回して体を水流に流されないようにしっかり固定した。目を閉じるといつの間にか眠りに落ちていた。