百合色の人生ー女児として暮らす初めての日ー

 伊藤の家は街中にある。典型的な建売住宅だ。車中から多くの小学生をみかけた。小学校が近くにあるのだろう。久男は広めにとってある家の前の駐車場に日産ノートをとめた。

 梨沙は日産ノートの後部座席に座っている。明子と華に挟まれている。華は若い女児特有の甘い匂いがする。彩夏と同じ匂い。多分、梨沙自身も同じ匂いがするのだろう。華が手を繋いできた。梨沙の目を覗き込みにっこりする。心配しないでという目だ。華の手は白くて小さく柔らかい。それでも、家に着くまでしっかり握っていたので、少しじっとりと汗ばんでいる。

「ここが梨沙の新しいお家だからね。自分のお家だと思ってくつろいでね。梨沙をいじめたりしないから。さあ、入って」

 華が可愛らしいピンクのスニーカーを脱いで家にあがると、梨沙も同じようなピンクのスニーカーをぬいで家にあがった。これからはここで暮らすのだ、そう思って梨沙は玄関からの景色を眺めた。右手にはリビングやキッチンがあるらしい、目の前には2階に続く階段がある。明子の声が聞こえる。

「華、梨沙に部屋を見せてあげて。リビングにジュース用意しておくから」

「はーい。ママ」

華は返事をすると、梨沙の手をとって、さあ行こう、というと目の前の階段を2階へ上がっていく。梨沙は華に連れられて2階へ上がった。

「いちばん手前のが私の部屋。私の隣の部屋が梨沙のだよ。梨沙がくるからいろいろ用意したんだよ。さあ、入って」

 手前の部屋のドアには可愛らしい「華のへや」という表札がかかり、隣の部屋には「梨沙のへや」の表札がかかっている。

 梨沙のために用意したという「梨沙のへや」のドアを華があけた。学習机があり、ベッドがある。床はカーペット。ベッドにはぬいぐるみが3体のっている。壁紙はピンクの花柄模様。女の子らしい部屋だった。学習机の脇には赤いランドセルがかかっている。本棚には漫画がおいてある。

「気に入ってくれるといいな。漫画は華が好きなのを買ったんだ。梨沙にも読んでもらいたいなと思って」

そう言って華はにっこりほほえんだ。あ、ありがとう、梨沙はぎこちなく返事をした。

「私の部屋も見せてあげるね」

 そう言って、華は梨沙の手を引っ張った。華の部屋も女の子らしい部屋だ。こちらも床はカーペット。本棚が漫画でいっぱいだ。学習机の脇には赤いランドセルがかかっている。

「来年の4月には私は中学生になるんだ。このランドセルともお別れ。下にいこう。ママとパパがまってる」

梨沙は華のあとにつづいて階段をおりた。左手にあるリビングルームに入ると、明子と久男がソファに座って華と梨沙をみている。

「さあ、梨沙もすわって」

華と梨沙は明子と久男の間に座った。目の前にはオレンジジュースが用意してある。

「梨沙も、私たちのことはパパ、ママって呼んでね。もう家族なんだから。さあ、練習してみましょう」

明子が梨沙をみてにこにこしている。

 梨沙は、明子をみて、マ、ママと呼んでみた。久男をみてパパと呼んでみた。二人とも嬉しそうだ。久男と明子は梨沙があの強姦殺人犯、東堂健だと知っているのだろうか?それとも全く知らないのだろうか?梨沙は不安だった。もしそうならいじめにあうかもしれない。華も味方ではないのかもしれない。そうされても仕方ない。それがこの刑の意味なのだ。でも、今の梨沙は東堂ではない。ただの非力な女の子にすぎないのだ。梨沙が怒ろうと暴力を振るおうとそんなものはたかだか知れている。そんなものは蚊が鳴いている程度だろう。今の梨沙には暴力を振るわれたら抗うすべなどないのだ。

「もう一回」

とママがにこにこして言った。梨沙はママ、と呼んでみた。

「梨沙は可愛いね」

 華が嬉しそうににこにこしている。ママがジュースに口をつけたので、梨沙もストローでジュースを飲んだ。オレンジジュースは甘酸っぱくておいしい。梨沙は周りを見渡した。ママもパパも華もうれしそうだ。家族内でいじめられる、それが杞憂に終わって欲しいと梨沙は願った。パパはその後で仕事に出かけた。

 梨沙の伊藤の家での最初の夕食はハンバーグだった。梨沙はハンバーグ作りから手伝った。ママが渡した可愛らしいエプロンを華と梨沙はつける。華は長い髪をシュシュでひとつにまとめる。

「梨沙、髪はまとめないとだめよ。ハンバーグに入っちゃうから。シュシュあげるね。部屋からもってくる」

 そういってエプロンをつけた華は2階へあがってしまった。女としての経験のない梨沙は長く伸びた髪の扱いに慣れていない。肩よりも長く腰まで伸びている。華が可愛らしい薄いブルーのシュシュを持って戻ってくる。華は梨沙の長い髪をシュシュでまとめて上へ折り返してまとめた。

「できたよ。梨沙はかわいい。これからは女の子なんだから気をつけないと」

 華がにこにこしている。華はどこまで知っているのだろうか?梨沙は華と二人で可愛いエプロンをつけて、ハンバーグを力一杯こねた。梨沙はとても非力になっていて、ハンバーグの肉団子をこねるのも一苦労だ。華は楽しそうに肉団子をこねている。もしかしたら、華よりも非力になっているかもしれなかった。肉団子をこねおわると、ハンバーグのかたちに整える。終わるとママがフライパンで上手に焼いてくれる。肉のこげるおいしそうな匂いがする。梨沙は華といっしょに水道で手を洗う。

「梨沙はハンバーグつくり上手だね。これからもママのお手伝い一緒にやろうね」

う、うんと梨沙はうなずいた。肉でどろどろになった手がきれいになっていく。梨沙はこの家族の一員として認められることを願った。

 パパは仕事で遅くなるというので、ママと華と梨沙で食卓を囲む。ママと華の女の世界の話に女児初心者の梨沙は入れない。二人の話を聞きながら食事をした。華とつくったハンバーグは肉汁たっぷりですごくおいしかった。久しぶりの美味しい食事だった。食事が終わると梨沙は華とエプロンをつけて一緒に食器を洗ったり、片付けたりする。

「梨沙、お風呂沸かしてあげるわね。先入りなさい」

 ママはお風呂を沸かしに行く。戻ってきて華に言った。

「華、梨沙にお風呂の用意をしてあげて」

 わかった、ママ、と華は答えて梨沙の手を引いて2階へ上がっていく。

「今日は華がお風呂の支度を教えてあげる。明日からは自分でできるようになってね。わからなければ教えてあげるからその時はいってね」

華がにっこりする。華は「梨沙のへや」のドアをあけると、中に入ってクローゼットの下の引き出しをあけた。そこには女児の色あざやかなキャミやショーツがはいっている。

「そこから好きなものをとって。今着ているのはお風呂場のカゴにいれておけば、ママがきれいに洗濯してくれるわ。後は、おりものシートね。私が使っているのを使って」

 梨沙は下の引き出しから可愛らしいディズニーのアナ雪の女児キャミとショーツを選んだ。これからしばらく下着は全てこんなものになるのだ。それから梨沙はクローゼットから可愛らしい部屋着を取り出した。

「おりものシートはお風呂場に用意してあるわ。教えてあげる」

 梨沙は下着とバスタオルを持つと、華に手を引かれて階段を降り、お風呂場にむかった。お風呂場の脱衣場の上の棚には生理用ナプキンやおりものシートのパックが並んでいる。この家で男はパパ一人。2人の女性に囲まれていれば、男は肩身がせまいのだ。女たちは堂々と生理用品をお風呂場の脱衣場に置いている。

「こっちがママので、こっちがわたしの。梨沙はどれでも好きなのを使っていいからね。もし自分のお気に入りのがあれば梨沙の棚を作ってあげるね」

 華が、自分のとママの生理用品を指差しながらいう。

「わかった。使わせてもらうね」

梨沙は脱衣場のラックに自分のキャミとショーツ、部屋着をおきながらいう。

「お風呂で使うタオルはここ。バスタオルはここよ。使い終わったら洗濯カゴに入れておいてね」

 華が脱衣場にあるクローゼットの引き出しから新しいふかふかのタオルとバスタオルを取り出して、梨沙のキャミとショーツなどと一緒においた。いったん、梨沙と華はリビングに戻った。

「華、梨沙の用意はできた?」

「できたよ。ママ。私、梨沙とはいっていい?」

「今日は私が梨沙と入るわ。いろいろ梨沙とお話がしたいの」

「ママと一緒?」

梨沙は驚いた。

「ええ、ママと一緒。いや?」

「ううん、いやじゃないけど」

「恥ずかしがらなくてもいいよ。梨沙。私たちは家族なんだから。今日はママと一緒。でも、明日は私と一緒に入ろうね。私、妹とお風呂に入るのを楽しみにしていたの」

華がにこにこしている。リビングのソファでゆっくりしているとお風呂が沸いた。

「ママはあとから行くから先にはいっていてね」

「わかった」

 梨沙はお風呂場に向かった。研究所でのお風呂は、看護婦に体を拭いてもらうか、シャワーを浴びるだけだった。久しぶりに湯船に浸かれることは嬉しかった。脱衣場で着ているものを脱ぎ、ショーツからおりものシートをぺりぺりと剥がして汚物入れに捨て、ショーツとキャミを洗濯カゴにいれた。用意してあるタオルを持って浴室に入る。浴室は暖かい。湯船はけっこう広い。カランは2つある。梨沙はカランの前に座って体を洗い始めた。胸は意外に大きく、ピンク色で乳首はぷっくらしている。乳首の下に乳輪がひろがっている。梨沙は乳房をもちあげて下を洗った。女性器のところはそっと優しく洗う。問題は長い髪の毛だ。男だったらシャンプーでごしごし洗うだけだが、今の梨沙の髪の毛は腰までの長さがある。梨沙は長い髪を洗うのに悪戦苦闘した。

「梨沙。はいるわよ」

ママの声が聞こえる。がらがらと戸が開く音が聞こえる。ママが入ってきたのだ。梨沙はシャンプーで長い髪を洗っていて目を開けることができない。

「梨沙は髪が長いから大変ね。今日は一緒でよかった。髪を洗ってあげるわね。明日は華に洗ってもらいなさい」

 ママの声が後ろに聞こえる。ママは梨沙の後ろで長い髪を洗ってくれた。リンスですすぎがおわるとやっと目を開けられるようになった。梨沙はママをみて、ありがとうと言った。ママはおっぱいから女性器まで丸見えになっている。女性器にはうっすらと毛が生えている。

「どうしたの?ママの裸をみて興奮したの?」

ママがからかって笑っている。男だった時だったら、興奮してじっとしてはいられないだろう。それほどにママの裸体は美しかった。だが、今では性的な興奮はちっともわかなかった。かつての梨沙を犯罪に駆り立てていたのは溢れ出る性欲だった。その性欲はたけりくるい、梨沙を犯罪に駆り立てていた。しかしペニスは解体され、大量の女性ホルモンが投与されている今では、かつて梨沙を突き動かしていたものはもう存在しない。まるでゼンマイがきれたブリキのおもちゃみたいだった。

「今度は私の番。私が体と髪の毛を洗うからよくみていてね。女はこうやって体や髪を洗うの。これからは女として生きていくんだからちゃんとおぼえないとね。私が手取り足とり教えてあげる。心配しないでね。梨沙」

 梨沙が湯船に入るとママは体と長い髪を洗い始めた。梨沙はママが体を洗うのをじっと見つめる。腕から初めて乳房、乳房の下、脇、お腹、女性器と洗っていく。長い髪も濡らすと前に持ってきて、シャンプーで上手に洗っていく。生まれた時から女をやっているママは、女になりたての梨沙とはまるでちがう優雅な動きで体をあらう。ママが、湯船にはいってきた。ママのお腹はふっくらしている。それは太っているのとはまったくちがう。女性らしい曲線でなだらかな丘を描いている。きめ細やかな脂肪がまるで雪のように降り積もっている。その下には子宮や卵巣が動いていて、女性ホルモンをつねに供給している。乳房は美しいカーブを描くお椀型で、その先端のぷっくらした乳首はつんとうえをむいている。梨沙はちょっと恐怖にも似たものを感じた。ママのからだは梨沙の将来のからだでもあるのだ。梨沙はママのような女のからだになり、男の人に抱かれて華のような子供を生むのだ。今の梨沙には想像もできないことだが、それは確実にやってくる未来なのだ。そのことが梨沙をすこしおののかせた。女としてやっていけるだろうか?

 ママは梨沙の隣にはいると、梨沙の肩を抱いた。

「梨沙はかわいらしい女の子ね」

 ママはうっとりして目を細めた。ママのあまいいい匂いがする。ソープやシャンプー、コンディショナーなどと、ママの本来の女の匂いが美しいシンフォニーを奏でている。

「ママはどこまでしっているの?」

「ママは梨沙が男の人だったってことは聞いているわ。二条院さんから預かった時に聞いたの。二条院さんの大切な養女。男だったから女の世界には慣れていないからしっかり教えてやってほしいってたのまれているわ。それにどんなに甘やかしてもいいっていわれているわ。梨沙のためならどんなにお洋服や女の子らしいものを買ってやってもいいっていわれているの。お金もいただいているわ。どんな男だったかは聞いていないし、聞くつもりもない。だって梨沙はこんなに可愛い女の子ですもの。どんな男だったとしてもそんなことは関係ないわ。いっぱいいっぱい甘やかしてあげる。思う存分かわいがってあげる」

 そういうとママは梨沙を抱きしめた。ママの女の甘いいい匂いが梨沙の鼻腔をくすぐる。

「ママはいつも華とお風呂にはいっているの?」

「時々ね。華が女の子でよかったわ。華がおおきくなっても一緒にお風呂に入れるから。これからは梨沙もおんなじよ。一緒にお風呂に入りましょう。女同士なんだから」

 梨沙はママと長い時間湯船に浸かっていた。梨沙には久しぶりのお風呂はとても心地よかった。研究所ではお風呂ではなくシャワーだった。手術の後でシャワーを浴びられないことも多く、看護婦たちが体を拭いてくれた。お風呂が恋しかった。

 お風呂から出ると、ママが大きなバスタオルで体を丁寧に吹いてくれた。

「髪はリビングで乾かしましょう。長い女の髪は乾かすのが大変なの。私が教えてあげるわね」

 梨沙は棚にある華のおりものシートのパックから一枚とりだして、シートをぺりぺりとはがして可愛らしい女児のショーツに貼り付けて履いた。アナ雪のキャミをきて、部屋着をきた。

「かわいいキャミをえらんだわね。梨沙は生理が近いみたいね。お腹がちくちく痛くなったりしたら教えてね。あと生理の間もお風呂に入って大丈夫よ。この家は女が強いの。梨沙がきてくれたおかげでますます。だから生理中でも心配しないでお風呂にはいってね」

 う、うんと梨沙はママに微笑んだ。リビングに戻ると華がいる。ママがドライヤーで長い髪を乾かしてくれる。ドライヤーで乾いた長い梨沙の髪はシャンプーのいい匂いがする。

「次は、華と梨沙でママの髪をドライヤーして」

はーい、と華が答える。

「梨沙、よくみていてね。あとで梨沙にもやらせてあげる」

 ママがソファにすわると、華がママの長い髪にドライヤーをかける。長い黒髪はきらきらして美しい。華がドライヤーを手渡してきたので、梨沙も見よう見まねでママの髪にドライヤーをかける。なかなか難しい。ママの髪もシャンプーのいい匂いがする。

「梨沙、初めてにしてはうまいわね」

 ママのドライヤーが終わると、華がお風呂に入るといって部屋から出て行った。パパはまだ帰ってこない。梨沙はママと一緒にテレビをみた。ママは梨沙の隣に座り、梨沙を抱きしめる。ママの女の体は柔らかくていい匂いがする。梨沙はママに抱きしめられてうっとりしている。

 だいぶ経って華がお風呂からでてきた。可愛らしい部屋着を着ている。長い髪はきらきらと濡れていてシャンプーのいい匂いがする。

「華。私がドライヤーしてあげる」

 ありがとう、そういってソファに座る華の綺麗な髪に、華から習ったやりかたで丁寧にドライヤーをあてる。長いきれいな華の黒髪はシャンプーのいい匂いがする。梨沙はうっとりしながらその匂いを胸いっぱいにすいこんでドライヤーを当てた。梨沙にはこうした時間は楽しい時間だった。男だったら絶対に味わえない至福の時間だ。華の髪がきれいに乾くと、梨沙はドライヤーを元あったところに戻した。

 パパはまだ帰っていなかった。

「梨沙、私の部屋に行こう。私宿題があるの。それが終わったら一緒に寝ましょう」

う、うんと頷く梨沙の手を握って、華は階段を上っていく。華の部屋にはいると、華は学習机の椅子に座った。

「ベッドで漫画でも読んでいて。すぐに終わらせるから」

そう言って華は赤いランドセルから教科書やノートを取り出した。

「どんな勉強をしているの?ちょっとみせて」

梨沙が覗き込んだ。

「こんな感じ。難しい?」

 華は宿題のノートを見せてくれた。梨沙はこれでも男の時は高校を卒業している。ぎりぎりだが。梨沙には華の宿題は簡単そうに見えた。これなら授業にはついていけそうだ。梨沙は華にぎりぎりくっついて、華のノートを見た。華の髪や体からいい匂いがする。

「これなら大丈夫そう」

「来年6年生になったら、ちゃんと教えてあげるね」

 華がにこにこしている。梨沙は華の本棚から漫画を取り出して華のベッドに横になった。華のベッドはいい匂いがする。女の子のベッドという感じだ。華のベッドに顔をうずめても犯罪者にはならないのだ。華のベッドの感触に包まれながら、華の読んでいる漫画をめくった。読んだことのない可愛らしい絵柄の女児向けの漫画だった。タイトルは『12歳』。梨沙には読んだことのない恋愛漫画だった。小学生6年生の女子はこんな漫画を読むのだ。華のふかふかのいい匂いのするベッドであまり興味をひかれない恋愛漫画を読んでいるうちに眠くなってしまった。

 華が勢いよく覆いかぶさってきたので梨沙は目を覚ました。

「こんなところで寝ちゃダメだよ」

 そう言いながら梨沙に抱きついてくる。梨沙も華をだきしめた。小学生でも女の子の体はやわらかい。むにゅっとする感じがする。華と抱き合って足を絡めると、ペニスの切り株がきゅんとなった。もう勃起するものはないはずなのに、切り株がむずむずする。それは男だった時の堰を切ってあふれ出すような、狩り立てるような性欲ではなく、ずきんずきんとするような、きゅんとするような、女性器がじんとするような変な感じであった。女体の快楽をまだ知らない梨沙はそれが女の性欲だとはその時はわからなかった。体をむずむずさせたまま、足を絡め華を抱きしめた。すごく気持ちが良かった。雲のうえにいるようだった。

「こうしているとすごく気持ちがいい」

「私もだよ。梨沙。これからはずっとこうしていられるね」

耳元で梨沙が囁いた。耳がくすぐったい。その時、インターフォンが鳴るのが聞こえた。

「パパが帰ってきた。おやすみの挨拶にいこう」

 梨沙は華に手を引かれて階段を降りて行った。玄関ではママがパパをお出迎えしている。

「おかえりなさい」

華がにこにこしていうとパパが

「ただいま」

と答える。梨沙も

「パパ、おかえりなさい」

といってみる。

「ただいま、梨沙。すっかりうちの子だな。華と仲良くやっていけるか心配していたがすっかり仲良しだな」

そう言って、パパはにこにこして、家に上がってくる。

「華、妹ができてすごくうれしいの。梨沙はとってもいい子よ。すごく仲良しになったよ」

 そういわれると梨沙はなんだか照れくさい。

「さあ、パパは夕食の支度をしているわ。華たちはもう寝なさい。華は明日学校だから」

「パパ、おやすみなさい」

華がそういうと、梨沙もおやすみなさい、と言って頭を下げた。おやすみとパパがにこにこしている。華は梨沙の手をとると階段をあがった。

「一緒に歯を磨こう」

華は梨沙を2階にある洗面所に連れて行った。2階にもトイレと洗面所がある。

「華の分の歯ブラシは用意してあるわ」

洗面所には2本のピンクの歯ブラシが用意してある。どちらがどちらのかわからない。

「どっちも同じようでどれが私のかわからない」

「どっちを使ってもいいよ。姉妹なんだし。コップも2つあるけどどっち使ってもいいよ」

そういって華はにこにこしている。しかたなく歯ブラシの1本をとって歯磨き粉をつけて歯を磨いた。残った1本で華が歯磨きをしている。女子と1本の歯ブラシをお互いに使いっこするなんて梨沙には新鮮なおどろきだった。男だったら女子が使った歯ブラシをつかったら変態扱いされてしまう。姉妹同士とはこうも仲がいいものなのだ。それとも華が特別なのだろうか。歯磨きがおわると、梨沙は華に聞いた。

「ここのトイレにもおりものシート用意してある?」

「あるよ。どれでも使って大丈夫。私は部屋に戻るわね。おやすみなさい」

「おやすみなさい。華」

 そう言って、梨沙はトイレに入った。棚の上のおりものシートのパックから1枚とった。部屋着の下を下ろすと、ショーツを下ろして、おりものシートをぺりぺりとはがした。おりものシートは白濁しねっとりしたおりものでべっとり汚れている。取り替えないと気持ち悪くて眠れそうになかい。そろそろ生理がちかい。ちょっと体調もよくない。剥がしたおりものシートは畳んで汚物入れに捨てた。新しいものをシートをはがしてショーツに貼り付け、ショーツをあげた。生理でない時も女はこうしたおりものに悩まされないといけないのだ。女の体は不便なものだと梨沙は思った。新しいおりものシートはさらさらで気持ちよく今日はあたらしいベッドでぐっすり眠れそうだった。

 梨沙は「梨沙のへや」に戻った。電気はついていない。部屋着のままベッドに潜り込んだ。華のベッドと違って、ぱりっとしたシーツの清潔な匂いしかしない。はじめてはいるベッドはひんやりとした。これからここで華の妹、梨沙として暮らしていくのだ。女児の世界に馴染めるか不安だった。梨沙は今のところ女児は華しか知らない。小学校にはいったら他の女児とどう接していけばいいのだろうか。考えても無駄だった。梨沙は目を閉じてうとうとし始めた。

がたんと扉が開いて目が覚めた。扉が閉まって廊下の光が遮られまた暗くなった。

「華。華なの?」

 そうだよ、と言いながら華がシーツの中に入ってくる。ベッドがぬくぬくと温かくなる。華のいいの匂いがして、いろとりどりの南国の花々が咲き乱れるむわっとした温室の植物園のようになる。

「あっ。梨沙、部屋着のまま眠ってる!パジャマにきがえよう。教えてあげなくてごめんね」

 華は部屋の照明をつけるとクローゼットに向かった。華はクローゼットの引き出しから女児用のパジャマをとりだした。ディズニーアニメのラプンツェルの可愛らしいピンクのパジャマだった。華も同じのをきている。

「お揃いだよ」

そう言って華はニコニコしている。ありがとう、そう言って梨沙はきている部屋着を脱いで、アナ雪のキャミと可愛らしい絵柄のショーツだけになった。華が持ってきたラプンツェルのパジャマを着た。

「梨沙の部屋着はあらってもらうね」

そういうと梨沙の今まで着ていた部屋着をもって出て行ってしまう。梨沙は華の温もりがのこっているシーツにもぐりこんだ。華が戻ってきて、照明をけして梨沙のシーツに入り込んでくる。

「妹ができたらこうしてみたいと思っていたの。一緒のシーツにくるまって眠るの。梨沙がきてくれて本当にうれしい」

 そういって華は梨沙に抱きついた。

「私がどんな子が不安じゃなかった?」

「男の子だったっていうからちょっと不安だった。でも会ってみたら本当に可愛い女の子。私、ずっと妹が欲しかったの。妹やお姉ちゃんがいる子が羨ましかったんだ。だから梨沙が来てくれて本当にうれしかった」

そういって、また華は梨沙に抱きついた。華のシャンプーのいい匂いが梨沙の鼻腔をくすぐる。華の体はマシュマロのようにやわらかい。華が梨沙の胸に触ってきた。パジャマの上から乳首をこりこりする。乳首が固くなり軽い電流が走り抜け、あっつ、と梨沙が声をあげる。

「だめ。華。びっくりした」

「梨沙のおっぱい大きくて羨ましいな。私のも触って。姉妹なんだから大丈夫でしょう」

 梨沙はパジャマの上から華の乳房を触る。乳首をいじってみる。ぷっくら太い。女の乳首だ。さらにこりこりする。華は、あっつ、と声をあげると、すぐに梨沙の口で、自分の口を塞いだ。梨沙は心臓が飛び出しそうなほどどきっとした。

「ご、ごめんね。びっくりさせて。あんまりこりこりされるといっちゃいそうになるの」

華は、そういって、梨沙の股間を触ってきた。

「ここも気持ちいいのよ。たまに自分でしているの。ママには内緒よ。梨沙と二人だけの秘密」

華は梨沙の股間から手を離した。梨沙も華の股間をやさしくさわってみた。そしてすぐに手をひっこめた。

「おやすみ、華」

梨沙はそういうと目を閉じた。

「大好き、おやすみ」

華は梨沙の頬にキスをすると、梨沙に抱きつく形でシーツにもぐりこんだ。梨沙は温かい温室のようなシーツの中で久しぶりに深い眠りの中に落ちていった。

第1話 百合色の人生ー解体ー

第2話 百合色の人生ー女児としての釈放