第14話 女友達

祐奈がマンションに戻り、スマホを取り出すとメールが来ていた。

「祐奈、戻ってきたの?元気だった?」

理子という知らない女からだった。祐奈はティーシャツとスパッツに着替えると、彩音のところへ向かった。

「あ、彩音さん、祐奈の友達からメールが来てる。どうしよう?」

「私が知らせたのよ」

そう言って、にっこり微笑んだ。

「本物の祐奈になるには、祐奈のお友達ともお友達にならないと。大丈夫、祐奈は事故にあって、少し記憶障害が残っていることになっているから。それに祐奈の交友関係はだいたい把握しているわ。後で、お母さんのところにも行かないとね。今は具合が悪いから、こちらのマンションで静養していることになっているの。元気になったら顔を見せることになっているわ。大丈夫、いろいろおしえてあげるから」

今は6月。季節はこれから夏に向かおうとしていた。

「このスマホに入っている写真は、祐奈のお友達よね。理子もいるの?」

そう言って、彩音にスマホの写真を見せた。祐奈の隣で微笑んでいる美しい女性を指差した。

「この子が理子さんよ。祐奈の1番のお友達。中学校から一緒だったのよ」

「そんな親友なら、私が偽物だってすぐにばれちゃうわ」

「大丈夫。心配はいらないわ。誤魔化せるから大丈夫。元気です。戻ってきましたってメールを入れてあげて」

彩音に促されてメールを返信した。すぐに返事がきた。

「すぐに会いたいわ。美香と一緒に土曜日に会いましょう」

「彩音さん、返事が来たわ。美香っていう子も仲良しのお友達?」

「ええ、すごく仲良しよ」

そう言って、スマホの写真の中の美香を指差した。

その晩、彩音から祐奈の生い立ちを聞いた。祐奈はお嬢様育ちだが、父の会社が倒産、母との関係が悪くなって、離婚。それでも、祐奈は慰謝料などを工面して有名なお嬢様大学を卒業した。東原とは、祐奈がお小遣い欲しさに銀座のクラブでアルバイトしている時に知り合ったのだ。祐奈は理子や美香と一緒に働いていた。祐奈は東原に気に入られ、愛人のようなものになり、今の祐奈が住んでいるマンションを当てがわれた。その時、祐奈のお世話がかりとして彩音と知り合った。おしゃべりが好きな祐奈は、理子のことや美香、他の友達についても詳しく話して聞かせた。だから、彩音は祐奈の交友関係をよく知っている。祐奈と東原の関係はすすんでいく。婚前旅行ということで香港に遊びに行った時に事故にあったのだ。

祐奈は思い切って、返信し、土曜日に、街の新山デパートで会うことになった。祐奈はスマホと理子と美香の写真をみて、彩音から聞いた二人の情報を頭に叩き込んだ。それでも、やはり偽物だと見抜かれないか不安だった。女の目はするどい。誤魔化しは聞かない気がした。

土曜日は6月の梅雨の晴れ間で、いい天気だった。彩音は祐奈を一人で送り出した。祐奈は、祐奈がよく着ていたブラウスにフレアスカートという格好で出かけた。新山デパートの前で待っていると、二人連れの女がやってきた。

「おはよう。祐奈」

にこにこしながら二人が手を振る。祐奈も、おはよう、と言いながら手を振り返した。

理子と美香は、祐奈に会うなり、きつく抱きしめた。女の香水の匂いがする。

「心配したんだから。はやく連絡が欲しかったな。でも、こうして会えたんだから十分。まだ、思い出せないところがあるから不安だったの?そんな心配はいらないわ。昔からのお友達だもの」

「本当に、いろいろ思い出せないの。大切なことも忘れちゃっているかもしれない。そうしたら、ごめんなさい」

「なにを忘れていてもいいわよ。これからもお友達でいるんだから。祐奈を支えてあげる」

「ありがとう」

そういうと、祐奈の目から涙があふれた。理子たちにすまない気がした。3人は新山デパートで婦人服売り場を見て回った。色とりどりの服を当てては似合う、似合わない、とおしゃべりをする。麗子に付き合わされた時は、退屈でしょうがなかったが、今はこうして理子たちと婦人服を見て回っているのはとても楽しい。祐奈は気に入った服を試着室で着て、理子や美香に見せる。二人はよく似合うと褒めてくれる。祐奈は全く疑われないことに違和感を感じていた。それ以上に友達と一緒に遊んでいるという楽しさがその違和感を上回っていた。二人は女として初めてできた友達だった。

その階には水着売り場があった。

「来週の土曜日は一緒にプールに行こう。楽しいわよ。郊外にジョイプレイスって温水プールがあるの。今日は、着ていく水着を買いましょう」

「いいね。祐奈も行こう。疲れたら、アイスでも食べて休んでいればいいんだから」

「ええ、一緒に行くわ」

水着売り場で水着を見て回った。祐奈には、男が女の水着売り場にいる不自然さはない。祐奈のきる水着は当然に、女物なのだ。理子と美香に見立ててもらいピンクのセパレートのビキニを試着した。試着室では、美香が着るのを手伝ってくれる。試着室の鏡で見ると、そのビキニは女らしい体型の祐奈によく似合っている。祐奈はそのビキニを買うことにした。理子も美香もそれぞれの水着を選んだ。

祐奈はトイレに行きたくなった。女は我慢しないで早めにトイレに行ったほうがいい。

「おトイレに行ってくる」

「ここで待っているね」

祐奈はトイレの女の列に並んだ。女の香水の匂いがする。女のおしっこは我慢が効かないのだ。早めにすませておいたほうがいい。それに今日はおりものが多く、シートを取り替える必要がある。

トイレからでると、理子と美香と一緒に最上階のレストランのイタリアンでパスタを食べた。祐奈はバスタをフォークに巻きつけて、口をすぼめて、女らしく食べて行く。理子も美香も同じようだった。

「来週の土曜日、プール楽しみにしているね」

理子が言った。うん、私も、と祐奈は返事をした。

「これからはメールじゃなくて電話するね。祐奈の声が聞きたいから」

美香が言った。

その晩、家に戻ると、理子から早速電話があった。どきどきしたが、30分ぐらいたわいのないお話を楽しくした。理子は祐奈が祐奈ではないと疑っていないのだ。騙している気がしたが、それでも本当に理子と美香と仲良くなれた気がした。

彩音の部屋で、教わりながらお料理をした。祐奈のお料理の腕はあがっている。

「理子さんと美香さんとお友達になったのね。よかったわね。女は女のお友達ができて一人前よ。男とはもうお友達にはなれないの、女の友達は女。プール楽しんでいらっしゃい」

祐奈と彩音は、祐奈のつくった夕食をほおばった。どれも美味しくできている。

「おいしい。自分がこんなおいしいものを作れるなんて信じられない」

「祐奈は、東原さんのいいお嫁さんになれるわよ」

そう言って、彩音が微笑んだ。

祐奈は部屋に戻ると、さっそく買ってきたセパレートの水着を着てみることにした。アンダーショーツも買ってある。薄いカーテンを閉めて、全裸になると、アンダーショーツを履き、上下を身につけた。ブラは前で紐を結んで後ろに回す。柔らかい餅のような乳房がすっぽりとカップに収まる。ショーツは真っ平らに股間に張り付いている。姿見に映った祐奈は、その水着がよく似合っていた。昔の祐奈はどんな水着を持っていたのか気になった。水着はドレスルームのクローゼットの中にあった。ワンピースやビキニタイプなど、いろいろある。祐奈はそれらを試着して姿見に映してみる。どれもよく似合っている。

姿見に映った女たちは、昔、祐奈が抱いてみたいと思っていた女たちだった。姿見に映る自分をみて、むらむらと興奮してきた。少し、クリトリスが固くなってきている。平らなショーツが少しもっこりしている気がする。

自分の水着姿を見て興奮するなんておかしいと思った。でも、祐奈にはどこか男の部分が残っているみたいだった。昔、女の水着姿に興奮していた自分が戻ってきている気がした。

水着のショーツの上からクリトリスを擦りあげた。女の体になった祐奈には、女の体のどこが気持ちいいのかすぐにわかる。ドレスルームで、ショーツの上からクリトリスをいじり、水着のブラのあいだに手を入れて乳首をいじり回し、オナニーを始めてしまった。

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